私は現在30歳。私が25歳の時に描いていた30歳像は、「なんやかんやで仕事も家庭も充実している」だった。
過去形にしていることからお察しの通り、何も叶えることはできていない。自らの意志で作り上げたものを壊し、満足できるものづくりのヒントを得ようとしたらメッタ撃ちに遭い、全てが壊れ、また再建しようと試みている段階だ。
ハタから見れば「可哀想な人」に見えてしまうかもしれないし、過去の自分に今の自分を誇れる状態では決してない。1度壊れることを経験すると、状況を楽しむ余裕さえ出てきている。
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就職活動を経て入社意欲の高い企業に入社をした。「どんなに苦しくてもガムシャラに働き、3年後には肩書きを手に入れ、30歳にはある事業に携われたらいいなあ」とざっくり思っていた。
目の前のことをコツコツこなし、経験値を積めばどこかで評価がされるだろうと、恥ずかしながら本気でそう思っていた。しかし、3年ガムシャラに働いても、肩書きどころか目の前のことがレンガのようにどんどん積み重なっていくばかり。次第に自らの力だけでは登りきれないような高い壁に変わっていった。
「本当に壁を越えた先に肩書きがあるのか?この高い壁を超えてまで手に入れたいものか?」と思うようになり、壁を壊すことを視野に入れるようになった。制度でいうと『社内転職』を図るべく、入社5年目に手に入れたい肩書きに近い部署に立候補。経験が評価されて、配属が決まった。
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喜びも束の間、肩書きに近い道に壁を越えずにショートカットしたツケが回り、今までの経験がほとんど生かされず、新入社員に逆戻りしたような気分を味わった。レンガを知らず知らず積み上げて壁になり、どう乗り越えるかを考え試行錯誤した環境がいかに良かったか。ここで初めて知ることになった。
前の環境よりもはるかに早くそして多く、レンガを含むいろんなものが飛んでくる。「ゴミのような罵声も再利用すれば壁になり何かを生み出すことができるかもしれない」と本気で思っていた。
目標が不明瞭になりつつある中で、携わる人間に歩み寄ることを拒否されたり、感情的に否定される日々が続き、気がついたら29歳6ヶ月。いつから癖になっていたのかを思い出せない出勤前の大号泣から立ち直れず、人生で初めて白旗をあげて、休職の選択を取らざるを得ない状況に陥った。受験も人間関係も部活動もうまくいっていた私の初めての挫折だった。
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「もう今の会社で何かをすることは無理かも」と休職して2ヶ月後には漠然と思っていた。壁を自らの手で壊した後、今度は壁を腐敗させてしまったのだから。同じ土地で壁をなくして更地にしただけの人間に価値はない。
逃げるような形にはなるけれど、「土地の相性が私には合わなかったんだ」と言い聞かせ、有り余った体力で週4日・合計100社と面接をし、新たな土地を探そうとした。契約に辿り着けそうな土地は9社見つかった。
けれど、どれも本当に私が本当に行きたい場所なのだろうか?この問いに自信を持って頷くことができなかった。より自分に合う職場環境を探すための手段として転職活動をしており、その会社で何がしたい・今の自分で何ができるかをしっかり向き合わなかったゆえの失敗だと思っている。
「私のやりたいことは何?」
「仕事で何を叶えたいか?」
この2つをシンプルに考えたとき
・必要としている人に必要な情報を届けたい、そのための地道な準備をしたい
・商品やサービスを利用してもらってその会社のファンになってもらいたい
→ファン作りを担うコンテンツ制作をしたいと答えが出てきた。
「今の会社を辞める必要ある?」そんな疑問が浮かぶようになり、徐々に大きくなってきた。そして転職活動を一旦終了し、休職期間が終了する2024年4月から同じ会社の別部署で就業をすることを選んだ。
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キャリアの壁にぶつかると、パワーアップすべく環境を変えて越えていくのが通説だと思っている。私はその道を選ばず共存することを選んだ。側から見たら目を逸らしているだけかもしれない。壁を壊したり腐敗させた経験があるからこそ、まずは土台を作り、必要な資材が欲しくなった時の手段として転職が最適だと感じたら全力で対峙していこう。
制限のかかってくる年齢に差し掛かっているけれど、この黒歴史とも言える経験が活きることを願いたい。