「洗濯物が喜んでる」
窓の外を見ながら2人で微笑む。
洗ったばかりの洗濯物が太陽に照らされ風に揺られて、なんだか日向ぼっこをしているように見えてくるのだ。

24年間住み続けた実家を出て、彼と小さなアパート住み始めたのは約3年前。彼は就職のため県外からこっちに移り住んでいたこともあり、約2年間1人暮らしをしていたから家事は一通りできる。
同棲するにあたって、家事の役割分担をした。お皿洗いやゴミ捨て、排水溝の掃除など汚れる家事を嫌な顔せず引き受けてくれた彼。でも洗濯物だけは面倒らしい。
一方、私は一番好きな家事が洗濯。当然のように、私は洗濯担当になった。そういうとこも相性ばっちりだね、と彼と笑う。

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洗濯機から取り出したしわしわの洗濯物をカゴに入れ、「よいしょ!」と持ち上げてベランダまで一気に運ぼうとパタパタと小走りし、11枚パンパンと勢いよく叩きながらシワを伸ばす。以前衣料品店でアルバイトをしていた時の浅はかな知識を生かして、「首のところが伸びないように下からハンガーを通すんだよ」と得意げに話す私を彼はキッチンからニコニコと見ている。

仕事が多忙で夜遅く帰ってくる私たちは、アパートの他の住民の迷惑にならないように、数日分のバスタオルや彼のワイシャツ、介護現場で働く私のユニフォームなどをまとめて週末に洗っていくスタイルだった。
土曜日の朝に早起きが得意な私が洗濯機を回して、ゲームで夜更かししていた彼がその後起きてくる。洗濯の終わりの音が鳴れば、のんびりと朝ごはんの準備をする彼とお喋りしながら干していく。
天気のいい日は太陽に照らされて、洗濯物がゆらゆらと揺れる。その光景を2人して眺めて、「喜んでるなあ」といった彼の一言が私たちの合言葉のようなものになった。

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それから数年たった今、物干し竿からは仕事のユニフォームが消え、新たにぬいぐるみに着せるような服が仲間入りした。そう、大好きな彼との間に子供を授かったのだ。
赤ちゃんが産まれる前に、服やガーゼ、おもちゃなど水通しというものをするらしい。これを機に、彼が1人暮らしの時から使ってきた洗濯機を買い替えた。SNSで検索し、便利と言われているドラム式洗濯機も検討したが、干す作業が大好きな私のたっての希望で縦型洗濯機を購入した。

赤ちゃんって思った以上に吐き戻しをする。何度も何度もガーゼで拭いて着替えさせて、シーツも洗濯した。数ヶ月前までいた先代の洗濯機と違って今の洗濯機は毎日フル稼働だ。

もちろん干す私も大忙し。ピーッと終わりの合図を告げる洗濯機の音で赤ちゃんが起きないかビクビクしながら、足音を立てないようにそーっと洗濯物を運び、ぱんぱんっと叩くのではなく手のひらで押すように伸ばす。泣き声が聞こえた気がして焦って寝室に行くとすやすや寝ている赤ちゃん。気のせいかと思って干しに戻ったらまた泣き声、今度は本当。

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あやしながら、時にパパに見てもらいながら干していき、終わった頃には着ている服を洗濯したいほどの汗。
でもやっぱり洗濯物を干す作業が大好き。彼のワイシャツをみてボールペンのしみに気づいたり、太陽に当てて綺麗に消えた赤ちゃんのうんち漏れから家族の生活が見えてくる。
でもやっぱり育休がけて職場復帰したら、やっぱり乾燥まで一気にしてくれるドラム式にしておけばよかった、と思うのだろうか。

数年後この子がもう少し大きくなったら、一緒に洗濯物をパンパンして家族3人で言いたいなあ。
「洗濯物が喜んでる!」