今の旦那さんと出会えて結婚できたことは、私にとって大きな出来事。
今までたくさんの人と付き合ってきた。告白されればよく分からない人でも付き合い、ちょっとでも目が合う回数が増えれば「両思いかも」と思い込む、単純な頭をしていた。
その中で私が唯一、いまだに思い出す人がいる。
1番甘い感情を与えてくれたけど、1番苦い味も味わった、色濃く残っている出会い。
その人は、高校内で1番と言われるほどの美男であり、付き合っていた人も美女。ビッグカップルと言われていた。廊下で何回かすれ違ったことがあるが、同じ高校生とは思えないようなオーラがあり、背丈も高く、顔もイケメン。
「こんなイケメン、世の中におるんやなぁ」とよく思っていた。そこから、私は彼のことを心の中で「イケメン君」と名付けた。
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ある日、近所のスーパーで買い物をしていると、遠くにイケメン君を発見。
学校以外で見かけると、別人のような、より強いオーラを放っていた。
そのオーラに耐えきれず、私はバレないように買いたくもない棚のコーナーに行って物色してるフリをし、イケメン君がどこかにいなくなることを願った。寿命が縮む思いだった。
部活動に行くために廊下を友達と歩いていると、突然誰かに声をかけられた。聞いたことあるような、ないような声。振り向くと、イケメン君が笑顔でこちらをみている。とんでもない人間違いをしているのではないかと思ったが、そうではなかったらしい。
「突然だけど、メールアドレス教えてくれない?」と、物凄い切り口で初めての会話を交わした。私はドギマギしながら、メールアドレスを交換。
それから、イケメン君との甘酸っぱいやりとりが始まった。体育祭で初めて私を見かけたこと、実はスーパーで見かけていて、声をかけてみたいと思ってくれていたこと、そして、付き合っていた彼女とは別れたこと。
メールのやり取りは続き、イケメン君と一緒に過ごす時間も増えた。部活が終わるとイケメン君が校門で待っている。家まで一緒に帰り、時には公園に寄り道して夜まで喋る。そして私たちは付き合った。怖いくらい夢のような、とろける現実。
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高校3年生になり、みんなが自分の進路について本気を見せ始める時期、イケメン君には叶えたい夢があった。勉強と体力が必要な職業であるため、アルバイトで貯めたお金でスポーツジムに通ったり、休日は図書館に行って勉強をしたり、密かに努力をしていたことを知っていた。
しかし、試験には通らず、フリーターの道を選んだ。周りがどんどん大学や就職が決まっていく中、悔しい感情を表情に何ひとつ出さずに、明るくお祝いしていたのも知っていた。
そんな中、私も大学が決まった。遠方になるため、1人暮らしが決定した。
遠距離恋愛が始まったが、私の未熟さが露呈していく。
それぞれの生活が忙しく連絡の頻度が減っていき、新生活で慣れないことばかりが続いたため、ストレスと寂しさで埋め尽くされていた。風船がはち切れんばかりの不平、不満が溜まっていく。そして、そういう時に限って、甘い誘惑というのは訪れる。
私は大学の先輩に恋に落ちた。浮気をしたのである。自分の弱さを「寂しさ」にすり替えて。
私がそっけない態度をとり続けたのにも拘わらず、イケメン君は何時間もかけて私のところへ来てくれた。なのに、私は彼を突き放した。そして、彼をふった。彼は泣きながら帰っていった。
私は長い夢から醒めた。ガタガタと崩れていく現実。結局先輩とも別れた。もう一度イケメン君によりを戻したいと言ったが、そんな思いは成立する訳もなく、儚く砕けていった。
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イケメン君は自分が選んだ道をちゃんと突き進んで、誰のせいにするわけでもなく、笑顔で色々なことを乗り切っていた。そこまでわかっていたのに、私は自分の弱さに負けてしまった。彼の今までの優しさがいっきにブワッと押し寄せ、大きな後悔となった。
人を思いっきり傷つけてしまったことに、自分自身も傷ついた。
人生で最大の後悔をしたけれど、そのお陰で今の旦那さんとの出会いにつながっていることは間違いない。自分の思いをしっかりと伝え、旦那さんの優しさや愛情をしっかりと受け止めている。
人との出会いは自身を映す鏡となる。
自身が成長すると共に、付き合っていく人も変わっていく。イケメン君と付き合っていた頃の私と、今の私は違う。それはきっと、イケメン君もそう。
出会いに無駄なことなんてないのだ。
今はもうどこで何をしているかは分からないが、きっと今もすぐ側にいる人を笑顔にさせているのだと思う。
私の彫刻のような思い出。