クレーマー、カスタマーハラスメント、モンスターペアレント…。
理不尽に文句を言い迷惑をかける人のことが最近ワイドショーなんかでも取り上げられて、社会問題化されている。

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働く人が気持ちよく働くことはもちろん1番ではある。
私自身接客業に従事していると「おいおい」と思うことはある。

でも、「理不尽」に絡みつくクレーマーのような言いがかりではなく、正当に意見を言わなくてはならない問題にぶちあたったとき。
そこに「理不尽」が含まれなくても「私クレーマーなんじゃないか…」と思って少し躊躇ってしまう。
先月そんなことがあった。

私の趣味の1つである、プロレス観戦。
その日はプロレスラーとのイベントがあり意気揚々と愉快な気持ちで友達と都内を歩いていた。友達は私に誘われてプロレス観戦をはじめたばかりのまだまだビギナープロレスファン。ヲタクの宿命というやつで、ビギナーファンにはついあれこれとお節介をしたくなってしまう。昔のDVDを貸しちゃうし、余ってるグッズもプレゼントしちゃう。

そんなお節介心からプロレスグッズのお店があるのでそこに友達を連れて行こうと思った。

私は何年か前にそこに行ったきりで良い品揃えだと記憶していたので、友達にも喜んでほしかったのだ。

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プロレスの話で盛り上がりながら雑踏を抜け、路地に入り、店内についた。

その店は中古グッズを扱っているので、まるで宝探しのような気持ちで掘り出し物に出会えることに心躍らせながら棚に並ぶDVDを眺めていながら「〇〇選手だ!」「この試合凄く良いんだよ」「この試合で△△選手ベルト取ったんだよ」なんて話していると奥から店員だか店主だか分からぬ男性が出てきて

「何?なんの用?見るだけなら出てって」

と冷たく言い放ったのだ。

…え?
以前ここで買い物した記憶があるので、お店の形態が変わって、店頭販売をやめたのかと思ったが店頭の商品には値札がついているし、店の外で調べてみると「店頭販売」をしていると書いてある。

店の中で騒いだり大声は出してない。まさか若い女性だからプロレスグッズの店入店拒否してるのだろうか?
そう思ったものの友達が口コミをすぐに調べてくれると性別や年齢、なんなら国籍問わずに店員に「出てけといわれた」「怒鳴られた」との声があって目を疑った。

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「そういうお店なんだよ、しょうがないよ」

そうはいうものの、私の怒りは収まらない。
私だけなら良いけれど、友達にまで嫌な思いをさせたのは、許すまじ。
頭の中ではその店主を思いっきりぶん投げて、コーナーポストに上がって、ダイビングギロチンドロップを決め、3カウントを決めているが、私の体に男性をぶん投げるだけの筋肉はついてないし、そもそもプロレスラーではない人間が、試合以外でそんなことしたらただの暴力に過ぎない。まあできないけれど。

戻って「店頭販売してないんですか?冷やかしではなくていいものがあったら買うつもりなんです」と言ってやろうと思ったが、友達も「え、いいよ。そこまでしなくて。それより近くにある別のプロレスの店に行こう」というのでその話はそれで終わった。
別の店の店員はとても感じがよく「出てけって言われないね」と笑い話にもなったが、
その日以降ももやもやが続いてしまった。

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もしも私たちが店で大声を出していたり、特定の選手のことを悪く言ったり、騒いでいたのなら「出てけ」と店内を出されても致し方ない。反省することしか出来ないけれど、でも私たちは「出てけ」と言われる筋合いがなく出ていかされたのだ。

これはクレーマーではなく正当に怒り、文句を言う権利があるのではないか…?
そう思うと身体がどうしても勝手に動く。手紙とボールペン片手に。

電話をするかも迷ったが、ただのクレーマーと思われないように、想いを形に出来るように手紙を書くことにした。
事の顛末と、 「楽しい気持ちだったけれど、お店の方に出てけといわれたことがずっとしこりのように残っていること」「プロレスの専門店のスタッフの人の態度ひとつでプロレス自体のイメージも悪くなってしまう、命をかけて戦っているプロレスラーが大切に築き上げてきたものも簡単に崩れてしまうから、プロレスに関わる人が悲しむようなことはしないでほしい」という旨を便箋5枚ほどがっつり書き綴った。

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もやもやを文章化することで、決して完全に無くなるわけではないが、感じたことをしっかり伝えることでお店が変わってほしいと思った、もしもあの人が店主だったらもうそれはもう無理だけれども…。
同じ思いをする人がいないでほしい、私自身がプロレスが大好きなので、プロレスを好きな人や、レスラーや関わる人が嫌な思いを絶対にしてほしくないのだ。

怒りを伝えること、それは時にクレーマーのようになってしまうのではないかと躊躇ってしまうが、でも正当に伝えるべきことなら伝えなくては駄目なのだ、そうすることで誰かを守れるかもしれないから。