子供の時から、私の人生において、結婚は必須だった。それは社会人になり、結婚がリアルな年頃になっても変わらなかった。

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社会人3年目、当時大学時代から5年の付き合いになる彼氏がいた。彼の口癖は「なんでもいいよ」だった。旅行に行くにしろ、ホテルや新幹線の手配、行きたい場所や店を見つけるのは、私の役割だった。

「俺、好き嫌いないから作ってくれた料理何でも食べるし、毎日ご飯作ってくれたら嬉しいな」ある日彼はこう言った。それを聞いた私は、何食べるかも私が決めて、それを作るのも私なのかとげんなりした。そんな風に思ってしまうほど、私にとって決めることは負担になっていた。これからも、彼といれば、いろんな事を全部私が決めなくちゃいけないのか。彼との結婚生活を想像したときに、そこにわくわくはなかった。

こんな気持ちのまま一緒にいるのは不健全だと思い、彼に話した。返ってきた言葉は、「楽しいよりつらいが勝っているなら、別れたほうがいいんじゃない?」だった。関係を終わらせる決断も私に委ねられ、私は別れを決めた。

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その後も、誰かと結婚したい気持ちは変わらなかった。相手を探しに、マッチングアプリ、街コン、友達の紹介などいろいろやってみた。だが、一緒にいて楽しく、落ち着く相手と出会うことは、難しかった。

相手探しを始めてから3年が経ち、マッチングアプリのスワイプもすっかり手慣れてしまった頃、職場の同期に、二人でドライブに誘われた。くだらない話から真面目な話までなんでも話せる、気の合う相手だった。仲良くなって6年近く経つが、二人で出かけるなんて初めてだった。突然の誘いに、私は動揺しつつも、どこか期待していた。

行き先から何を食べるかまで、お互い意見を出し合って決めた。とても楽しいドライブだった。そこから一ヶ月ほど連絡を取り合い、2度目のデートの帰り道、彼から告白された。

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彼は、一緒にいて楽しく、心落ち着く相手だった。もっと一緒にいたい、もっと知りたいと思った。もう好きだった。だから、二つ返事でうんと答えればよいのだが、私は葛藤していた。なんせ彼には結婚願望がないからだ。

これまで人生の必須としてきた結婚を、簡単にあきらめることはできない。でも、彼と一緒にいたい。私はそんな葛藤を彼に伝えた。するとこんな言葉が返ってきた。

「俺は、今まで職場の人はもちろん、同じコミュニティの人と付き合わないようにしてきた。別れた後の気まずさや、周りからの視線を想像したら耐えられなくて。でも、心配していることが実際に起きることってほとんどないし、まずはやってみないと、どうなるかなんて分からない。だから、同じ職場だからってのは置いて、もっとお互いのことを知るために、付き合いたいと思った。こうやって、人間の考えって変わるものだし、変化こそ人生の醍醐味じゃないのかな。お互い変わっていくかもよ」

それを聞いて、私ははっとした。これまで自分も相手も変わらないという前提で、考えていた。決めない元彼と別れるときもそうだった。でも、それは自分と相手の変化をあきらめていただけだったのかもしれない。私は、同じ事を繰り返したくなかった。進化したいと思った。だから、彼と付き合うことに決めた。

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彼と付き合ってもうすぐ一年が経つ。彼とのデートでは、変わらず二人で意見を出し合う。駅ビルのレストラン街に行けば、「ここどう?」「ちょっと今は違うかも。ここは?」「うーん、ちょっと違うなぁ」と、入る店を決めるのに30分話し合ったことも。時間が掛かっても、例え入ったお店が期待外れでも、二人で決めたお店に入る彼とのデートを、私は気に入っている。

彼と私は結婚するのか、しないのかどうなるのかまだわからない。だけど彼となら、二人で話して、二人で考えて、私たちらしい答えを見つけられる気がしている。