2月、大学の卒業式が迫っていた。順調に進んでいれば、私もその卒業式に参加していたのではないだろうか。しかし、私は大学1年の冬に中退し、もはやその大学の学生ではない。だから、大学の卒業式など私には関係なかった。
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2月の半ばに入って、高校からの親友から連絡が来た。同じ大学の違う学部に進んだ彼女は、無事にこの3月に卒業する。
「一緒に卒業式に出てくれないかな」
それが、彼女からの連絡の内容だった。
私はもうその大学の学生ではない。学業も修めていない。一体どういうことかと話を聞くと、大学の卒業式で着る袴に合わせる髪飾りを私に作ってほしいということだった。私が作ったものを身につけることによって、私を卒業式に参加させようとしてくれている。そんな親友の思いに涙が出た。高校の時から持病のために学校を休みがちだった私を支え続けてくれた彼女。体調と学校生活の両立ができなくなり、大学の中退を選んだ私をずっとずっと気にかけてくれていた。まさか、こんな形で私も卒業できるなんて。思ってもみなかった展開に胸が高鳴った。
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それにしても、卒業式の袴に合わせる髪飾りを作るなんてかなりの大役ではないだろうか。アクセサリー作りが趣味で、普段から細かい作業をしている分、手先の器用さには少し自信があった。作った物を友達にプレゼントしたり、たまに小さなクラフト市に出品したりしていた。それにしたって、あくまで趣味の範囲だ。大切な日に身につけるものを、本当に私が作ってもいいのだろうか。そんな不安と親友の気持ちに応えたいという思いで胸がいっぱいになりながら、私は髪飾り作りをスタートさせた。
袴のデザイン、生地の色、親友のイメージカラー。考えることはたくさんあった。色々な作り方やデザインを調べ、試作をし、その都度親友と相談し合った。そうしてできあがったのは、深い赤に黄色を差し色にしたつまみ細工の花の髪飾り。彼女への思いがたくさん詰まった作品になった。
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卒業式当日。「無事に卒業しました。本当にありがとう」。そんなメッセージとともに、卒業証書を持ち、笑顔を見せる彼女の写真が私のスマホに届いた。彼女の髪には私が作った髪飾りがついている。「本当にありがとう」なんて、こちらの台詞だった。高校の時からずっと彼女の存在に救われてきた。いつだって彼女は私の苦しみをすくい取ってくれた。今回の卒業式だってそうだ。体調と両立できずに中退を選んだ私のやりきれない気持ちを、彼女は一緒に卒業式に参加することで昇華してくれた。
「卒業おめでとう」
そうメッセージを打つ私の顔は涙でグショグショだった。こんな顔見せられないなあ。そう苦笑しながらも、うれし涙が止まる気配はなかった。
入学、卒業、誕生日。「お祝いの日」は日常に溢れているけれど、自分の好きなことで大切な人をお祝いできるのは本当に幸せなことだと思う。何度思い出しても涙腺が緩む、私の大切な「お祝いの日」の思い出だ。