就活。1年の間に何度か耳にするものの、聞くたびにモスキート音のように耳を塞いでしまいたくなるもの……。
私の就活は長いもので、ある年の4月から翌年の2月までの10ヶ月に渡るものだった。

就活のやる気が出なかった私は、プラプラとしているうちに卒業年になってしまった。早い子はもうその時点で就職が決まっていて、素直に喜べない気持ちと「まぁなんとかなるっしょ」という気持ちが渦巻いていた。渦巻いていたというくらいだから、焦っている気持ちがほとんどだったと思う。
結局、プラプラは最後まで続き面接を受けたのは合計でたったの4社。コロナ禍だったこともあり、面接もほとんどがオンラインで行われ、うち2社でインターンが決まった。

◎          ◎ 

1つ目は、学校の先生の勧めで行った会社。
自宅から毎日片道2時間ほどかけて通い、眠気に耐えながらインターンを続けた。
「あのさ、本当にこの会社に入りたいんだったらちゃんと言った方がいいよ」なんて、私が付いていた先輩に言われたときに、「え、こんなところ無理!」と心の中で叫ぶ自分に気がついた。

だってそこは、私服での勤務だったのにみんながみんな、あまりにも汚れ過ぎていた。仕事柄なのか、身だしなみを整えるなんていう文化はなさそうな場所だった。
仕事中に呼び出されて、「そこのコンビニでもずく買ってきて」と言われた時、堪忍袋の尾が切れて、他の場所に面接に行ってインターンが決まり、もずく会社とはあえなく縁切り、南無三。

2つ目の会社は、自宅から1時間ほどでもずく会社に比べたらまだ近いけど、十分時間のかかる会社。ただ、もずく会社と違ってきれいにしている人が2名ほど。もずくを買いに行かされることもない。

仕事の内容もなんとなく私に合っていたので、ここで働けたらなぁ……なんて思いながら、必死に毎日のインターンをこなしていった。

◎          ◎ 

……が、しかし、気づけば2月、周りのみんなはとっくに就職が決まっていて、私だけが一向にインターンのまんま。このまま一生インターンとして働かされてしまうのではないか?というときに1通のメールが。採用通知だった。

即座にメールに返信し、嬉しいけれど家族になんて報告しよう、と鼻の下が伸びつつも泣きそうな、よくわからない表情だったと思う。

家に帰って、母親と父親の眠る寝室へ行く。
なんと言ったらいいのか分からなくって、「決まったよ……」と言ったと思う。「決ま」くらいでもうなんでか、涙があふれてきて思わず両親に抱きついたら、察しが良くて、「長かったね、良かったよ……」と、3人で肩を寄せ合い抱き合いながら涙したのをよく覚えてる。

そうだったな、思い出した今でも泣けてくるな……この日のための長期考査だったのではないかと思えるほど、意味のある時間だった。

◎          ◎ 

結果、私はその会社に2年半お世話になったのち退社し、今は好きなことでフリーランスという道を選んだ。就職とは一番縁遠い形になってしまった。

だけどね。就活って悪かないよ。

一緒に喜んでくれる人がきっといるから、あなただけで頑張ってるわけじゃないから。

もずく買ったのだってきっと、あの日涙するためには必要だったんだと思うよ。悪かないよ、就活も、もずくも。

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