私の強みはなんだろう。
就活を始めたとき、いちばん悩んだのはそこだった。

大学生活も折り返しに入り、インターンも少しずつ始まったころ、就活のガイダンスがあった。学校で行われた就活ガイダンス。エントリーシートの書き方、学歴や職歴の書き方などを学ぶ講座だ。

資料をもらい、見よう見まねで書いてみた。名前、生年月日、学歴、職歴まではスラスラと書ける。年号を揃えること、学校名は正式名称で記入することなど、細かく気をつける点はいくつもある。慎重に書き進めながらも、見開きの左半分は難なくクリアできた。

問題はここからだ。右側。学生時代に努力したこと、自分の強み、自己PR。書けることが何ひとつ浮かんでこなかった。ペンが止まり、私もフリーズした。

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頑張ってこれまでの人生を振り返ってみるが、出てくるエピソードがまったくないのだ。大学生として参加したボランティアや社会活動はなく、ただアルバイトと勉強をしながら家でダラダラ過ごしていただけ。誇れることは何もしていなかった。

自分の長所もわからずフリーズ。短所ならいくらでも書けるのに、と思いながら、短所の欄だけいくつか単語を並べた。長所は空欄のままだった。

必要なのは自己分析。それはとても良くわかっていた。ガイダンスでも、外部の就活セミナーに参加しても言われることだからだ。やり方を学んでも進まない。考えているだけでセミナーの中で与えられた時間は過ぎていく。書けないまま次の話に進むしかなかった。

これだけ長所が浮かんでこない原因は明確だった。自己肯定感の低さだ。圧倒的な自己肯定感の低さを誇っていた私は、何もかも自分よりも優れている人はたくさんいる、と自分を卑下していた。むしろこの面を長所にできるくらいだ。

何をしてもうまくいくはずがない。自分ができていることは当たり前なのだ、と思っていたので、長所とはなんぞや、という問いを繰り返していた。

やっとの思いでひねり出したのが、真面目であること。それしか取り柄がないと思っていた。

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ただ、真面目だったことで救われたこともあった。何事にも真面目に取り組むので、準備は念入りに行った。面接で話す内容を紙に書き起こし、エピソードは必ず最初に出てくるようにした。

就活の面談予約をして、面接練習をすれば、言われたことは過剰なほど意識した。THEステレオタイプのような面接の受け答えを練習し、女優になったかのようにセリフを覚えて面接に望んだ。

面接前夜、私は地元を離れて就職をする予定だったため、面接会場近くのホテルに宿泊した。そこでも面接練習は怠らず、明日話す内容を一言一句言えるまで何度も練習した。

そして迎えた本番。自分の番が比較的早く、最初のグループで呼ばれた。前に2人ほどいたので、順番になるまでひたすら練習を繰り返した。徐々に高まる緊張。緊張をすると冷や汗で身体がガタガタと震えた。面接が始まるとさらにエスカレートしていき、面接中は話すことよりも震えを抑えるほうに必死だった。なんとか面接官にバレないように話せるか、というミッションだ。

受け答えに整合性をなくしてもいけないので、全神経を研ぎ澄ませて面接に臨んだ。とにかくいっぱいいっぱいで終えた面接。受け答えはできた。面接の前にあった小論文も書けた。内容も文字数も問題ないと思う。どうか合格していてほしい。そう願って終えた1日だった。

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必死になって乗り越えた甲斐があったのか、無事に試験は合格し、就活は終わった。

どうしてあそこまで緊張していたのかはわからない。発表されたサイトに自分の番号を見つけたときはとてつもない安堵だった。よかった、苦しんだことが報われた。

しんどかったけど、真面目な自分が頑張った結果だと思った。自分をちゃんとねぎらってあげたいと思った瞬間であり、私の将来が拓けた瞬間でもあった。

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