大学4年の冬、新卒カードを捨てた。
将来やりたいことなんて見つけられないし、そもそも企業に受からない。
当時内定の数はゼロ。書類で通った企業も、適性検査を受けるとお祈りメールが返ってくる。メールがくるたびに、自信を失う。
「わたしは社会人として、胸を張って生きていくのなんて無理なのかな」
社会人としてのわたしをイメージするのはとても難しかった。わたしらしさが社会人になることを拒んでいるように思えた。
卒業が近づくにつれ、周りは将来の話で盛り上がる。わたしに話題が振られると、「クリエイティブな仕事したくて模索中だよ〜」「とりあえずアルバイトでもしようかな」と作り笑いで誤魔化していた。そんなの本心ではなかった。
友達は正社員でわたしはフリーター。
当時のわたしは、前を向いて歩く友達がとても輝いて見えた。友達と比べてわたしはあまりにも小さな存在のようで、そんな自分を好きになるのには時間が必要だなって。周りと比べてしまうわたしも、変にプライドが高いわたしも、好きになれなかった。
◎ ◎
2年のフリーター期間を経て、転職を考える機会がきた。
契約上はアルバイトだったが、小売の店長業務をこなした。店舗での仕事をこなしながら、正社員の上司の仕事も一部受け継いでできることを増やした。フリーター店長として働いて、もうそろそろ正社員になれるかな。社会に認められるかな。そんな気持ちが湧き出るようになった。
職を探すときの最初の壁は、何の仕事をしたいのかを考えること。未来を妄想するのは得意だが、明確なゴールがいつも見つからない。こんな自分になりたい。理想ばかり追いかけて現実が見えない。
店長の仕事は楽しいことも多かったが、わたしには将来が見えなかった。
お客様と楽しくお話する時間、ギフト提案が通り購入に繋がった瞬間、嬉しいなと思うことばかり。ただバイトで昇給見込みはなし。生活を思うと新しいステップを踏み出さなければいけないときだなと思う。
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「将来の夢はありますか?」
わたしが苦手とする質問のひとつだ。
就活生の間だけではなく、物心ついた頃からの悩みだった。卒園アルバムの「将来の夢」の項目に、目の前にいた女の子の夢を転記するくらいには思いつかない。
インターネットに転がる適職診断は過去に何度も試した。「クリエイターが向いています!」「フリーランスが向いています!」とばかり表示される。
結果だけ見ると、社会に馴染むのは難しいのかなと落ち込んでしまう。こんな内容の結果を見た企業は、落としたくなる気持ちもわかる。思わず共感してしまった。
流行りの16personalitiesを受けると、INFP-Tと出た。理想と共感力が高い人を表す記号らしい。ただインターネットで検索すると、サジェストに「社会不適合」と表示される。
やはりわたしには、社会に溶け込めるスキルなんてない。そう思わせた。
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落ち込むわたしのもとに、転職サービスの広告が流れてきた。
普段広告は迷わず飛ばす。ただそのときはなぜか止めて見ていた。自分の意志とか無視して、タップし続けていく。その手が止まらないくらい、転職の意志が強かったのだと。
そのSNS経由で見つけた転職支援サービスの無料体験に応募した。面談では、あなたがあなたらしく生きるためにと丁寧に説明してくださった。この転職支援サービスで自分の望む未来に近づけるのかは不明瞭だが、やるしかないと思い少しずつ転職活動をしてみた。
「適性検査で落ちる企業は縁がなかっただけ。フリーターでもしっかり働いた経歴があるから、必ず就業先は見つかるよ」
キャリアアドバイザーのもと就活に励んだ。大学生時代には知る由もなかった就活のコツを教えてもらい、自分のペースで内定を取っていった。
まさかわたしから企業を選ぶ日が来るなんて。内定ゼロのわたしには想像できなかった世界のように思える。
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転職後、わたしは小さな施設のマネージャーとして採用された。体感だと店長時代の5倍くらい仕事量があるように感じる。そのくらい充実感もある。
もちろん、うまくいかないこともたくさんあり指摘を受ける日々。環境に恵まれて、上司や周りのスタッフに助けられながら奮闘している。
正直、この仕事で一生食べていけるとは思っていない。それでも今はマネージャーの仕事に誇りがある。
次のステップに進むための就活。わたしは就活をこのように捉えることにした。次に転職を考えるときのために、今わたしは目の前の仕事に精一杯取り組む。
わたしらしく生きるために。
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