今までたくさんの習い事をしたり部活を一生懸命したりして、大人たちから聞かれる「将来の夢」を模索していた。習い事や部活ではやりたいことは見つかるはずもなく年生になった。2020年コロナウイルスによって大学は閉鎖され、入学早々今まで聞いたこともなかった「オンライン授業」というものが実施される。思い描いていたキャンパスライフとはほど遠い、人に会わない生活が当たり前の大学生活が始まった。

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そんな日々から2年ほど経ち、授業は対面授業に戻り始めた。周りの大学生は、人と違うことを追い求めているように見えた。起業したいと言ったり、自分のやりたいことが見つかったとい趣味に没頭したり。

「行動して結果を出さないと」

高校までにはなかった、焦りを感じ始めた。社会と学の中間地点に立っているような大学生は、経験もスキルもなければ社会に求められないのではないかという焦燥感に駆られたまま、大学4年になった。

就職活動は企業の説明会から始まる。まずは学内で行われた企業説明会に参加した。私は、初めて就活という奇妙な空間に足を踏み入れることになる。学食が企業説明会の場所として使われ、企業ごとに区切られている。ブースには10くらい椅子が並べられている。周りの学生たちは自分を売ることに必死で、名刺交換をしたりたいして面白くもない説明に一生懸命相槌を打ったりしている。その空間にいると本当の気持ちなんて言えるはずもなく、自然と受け身になっていく自分を感じた。「こんな仕事楽しくなさそうだな」「私のやりたいことって何だったっけ?」そんな気持ちを押し殺して、企業説明会という波に飲み込まれていく。ああ、社会人は面白くもないことを自分事として受け入れるフリをしなければならないのか。

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大学までは良い成績をとることがいいこととされ、平均的な能力を求められる。しかし、就活する時になると、人とは違う強みをアピールしなければならない。個性をつぶすかのように過ごした先に待っているのは、自分を売ることだったのだ。そんな矛盾を感じながらも就職活動を続けることは難しかった。

就職活動の面接では目をキラキラさせて志望動機や自己アピールをするのに、いざそこで働くとなると、心に蓋をして生活のためだと割り切って働かなければならない。どうしても生活のために働くことや仕事だから割り切って働くことが受け入れられなかった私は、就活を真剣にやることが馬鹿馬鹿しく感じた。

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そんなことを考えていた私は、何十社にも及ぶ企業の面接を受け、就職活動という奇妙な世界観を味わった。そして、3社しかなかった内定を全て辞退した。辞退するんだったら、最初からしなければよかったのにとも思うが、就職活動を経験していなければ、自分のやりたいことと本気で向き合う機会はなかったと思う。就職活動が嫌でやらないと決めたなら、他に「これならやりたい」と思えることを1つでも見つけることが大切だと思う。それを見つけない限り、また就職活動はいつかやらなければいけないから。就職活動はしんどかったけど、自分のこれからの人生に向き合う良い機会だったと思う。妥協せずに自分のやりたいことを優先してもいいし、無理に周りと同じスピードで、職業を決めなくてもいい。

就職活動は、就職するためにやることなのかもしれないけど、必ずしも就職しなればいけないわけではない。企業に入るのは嫌だからフリーターになる、もう少し勉強してみたいから大学院に進学するでもいい。やってみた上でそれが自分で決めた道なら、それは立派な就職活動だ。