私には友達がいた。なぜ過去形なのかは追々、分かってもらえる。

あれは私が高校生の時。その友達が、あの頃の番の友達だったと思う。

彼女は家庭環境があまり良くなく、母親が彼女のことを大切にするのをめてしまったようで、ある時自宅の鍵を変えられ、二度と家に入れないようにまでされていた。母親は高校にもお金を払わなくなり、やむなく退学。父親が義理の父親だったことも、発覚したりした。

本当にドラマのような人生を送っていた彼女だけど、私は彼女のことが本当に好きだった。こんなふうに彼女のことでエッセイを書いていると知られれば提訴してきそうな、気の強くて、自分というものをしっかり持っていて、だけどどこか強がりな寂しさを持った彼女が気にかかって仕方なかった。

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実家に帰れない彼女は、祖母の家へ移るしかかったものの、相当な田舎に住んでいたので高校に通うのも大変で、退学するまでしばらくウチに泊まっていた。

家族全員、彼女のことを気にかけ、好きになり、一緒に花火をしたり、母親のご飯を「本当に美味しい、本当にこんないいお母さんいないよ」なんて言っているのを聞いたり、父親が彼女にかけた「もう家族やから」という言葉も全部、彼女が今までして貰えなかったことだろう。心がキュッとなる。

そんな彼女は、心を保つ為か、男に依存していた。一人の男というよりは、何人もの男で、街中でかっこいいと思う相手が居れば声をかけに行く。

「その時は私のこと褒めるんだよ、分かった?」なんて、下僕のように命令もされていた。ハイ、と応じないと「オイ!」なんてビンタされる日もあるので、素直に従っていた。

ある時、私にも好きな人が出来た。高校生だったので色んなことに興味津々、好きなバンドを見に行った時に一緒に出ていた人たちの中に好きな人が出来た。

今となればあれは、あちらの若気の至りでたぶらかされていただけだけど、当時女子高だった私はライブの後に「ちょっと分けて」とジュースを要求されただけで、バクバクしちゃっていた。恥ずかし。
そんなことがあったのだと、いつものように彼女に話すと、ただひと言、ぽつりと、「フーン」という彼女。

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そして、彼女と私の妹と人で出かけていた時のこと。妹が見慣れないネックレスをしていた。ヘビのモチーフの付いたネックレス。特に気にとめてなかったけれど、人で歩いていた時「ねえこれ男に貰ったんだって!やばくね?」と彼女。妹もただ頷く。

私はもちろん、妹との方が長い付き合いなので(あぁ嘘だな)と直感した。妹は好きな男や、出かけるような男が出来た時黙っていられるタイプではなかったし、なにしろそう言われた時の妹は何かを隠そうとしている雰囲気だった。

その日彼女は祖母の家に帰ると言うので、見送った後、帰りに妹に「ウソでしょ、それ。普通にあの子から貰ったでしょ?」と尋ねた。理由も何となく、彼女のことだから「お前だけじゃないぞ、そんないい気になっているのは」と示したかったのだろうと。それも伝えると「なんで知ってるの?!」と妹。

半端な時間を過ごしてきた訳ではいので、どちらのこともよく分かっていた。彼女はこういうことをするタイプだと。

そんな小さなウソ。ただ、私はそれが許せなかった。まるで「お前は私の知らないところで幸せになる権利は無い」と言われているようで、そうか、私が男と深い仲になったとて喜んでは貰えないのだとやるせない気持ちいっぱいになり、「私はお前のモンじゃないんだぞ!」と、段々と連絡を取らなくなり完全に疎遠となった。

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あんなに濃密な時間を過ごして、家族のようにまでなったのに、今思えばそんな小さなウソがきっかけで他人以下にまでなってしまった。

今思えば彼女はきっと、寂しかったのだと思う。私がいい気になることよりも、彼女の知らないどこかへ行ってしまうかも知れないのが嫌だったんじゃないかな、なんて…ウソをつかれたことは本当にショックだったし、今でも彼女にその話は出来ないでいる。連絡も全く取っていない。

だけど、今でも何となく、私は彼女が気になる。多分、大好き。放っておけない。

今もどこかで寂しい思いをしているんじゃないか?と、大きかったウソは時を経て小さなウソになったから、帰っておいでよと言いたくなる。元気でいるの?