来月の中旬、私は初めての手術を受ける。
1年もかけずに60キロ以上ものの減量に成功した代償として太ももやお腹,二の腕の皮余りがとても目立つ身体になってしまったからだ。手術は所謂皮余り切除というものだった。

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良質で感じが良くて安い病院を血眼に探し回ってやっとの思いで見つけた病院でさえも部位ごとに130万。ダウンタイム中は仕事は愚か、もしかしたら自由に身体を動かせることも出来なくなってしまうだろうから、その間の生活費も必要となって計150万くらいは掛かる。

当然、去年からこの為だけに無理をしてでも働きようやく7割近く貯めることの出来た私にとって何箇所も施術を受けられる程の豊かさは私には無い。何なら残りの3割は分割払いとして払っていく。

だから今回、私は目立つ箇所の中でも一番に気にしている太もも−−可愛く言えばもちもちとしたクレープのような感触を残しつつ目立っている−−両内もものみをやって貰うのだ。この事は先程も述べたように貯める時から決めていた。

我ながらに硬い意志だった。

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その上で生まれて初めての手術、皮膚と肉を切る経験。

それは私が小さな頃からの長年の悩み、苦しみから自分自身で勝ち取った証として、きっと私が生きる一生の間で何度も傷跡と共に記憶として残っていくのだろうと思うと、まだ手術どころかカウンセラーすらも受けていないのにも関わらず、もう今から純粋な楽しみを何度も感じては何度も感動してしまう。

術後の主に2週間は痛みと張りで苦しくて堪らない筈なのに、赤黒く内出血が酷いというのに。私はその不安もきちんとあるくせに次の瞬間にはどうしても小さな子どもの様なわくわくが胸を駆け巡るのだ。

手術を受けてからの1ヶ月、或いは2ヶ月の間のシーズンは丁度夏真っ盛りになるだろう。しかし私にとっては手術後のダウンタイムとして家で安静にすることがメインとなる。

なのでこれを機に夏に向けてやりたかったこと、やろうと思うことを今からちまちまと考えているのだが、その時間はなんだか旅行に行く前の計画を立てている時特有のあのソワソワとした胸の高ぶりを感じてしまい今から凄く幸せな気持ちになるのだった。

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夏にやりたいことは沢山ある。が、その中で必ず実行したいと思えることは主に食にある。
そう今年こそは冷やし素麺、そうして仕事に追われて数回しか作っていなかったパンをまた焼きたいのだ。

ひんやりとした硝子の、厚くて大きなボウルに目一杯冷やして締めた素麺を入れ甘酢で味付けしたきゅうりとトマトも思う存分飾り付ける。勿論グラスカップに入れればカラカラと鳴る様な四角くて透明な氷だって沢山入れちゃうのだ。

パンは何を捏ねて焼こうか。前に失敗してしまったベーグルはどうだろう。時間があるからチョコだってクリームチーズだってなんだって挑戦してみせる。茹でる工程が難しかったな。あそこは要注意だわネ、と今から頭にメモをする。

夏の食べ物なんて、まだ5月のくせにどれもこれも簡単に思いつくから夏は不思議だと思う。暑くて、日に焼けるし、何より虫が多くて好きじゃないのに、食べ物だけは別なのだ。

夏野菜と蒸し鶏の焼き浸し,ジョッキで作る杏仁豆腐が入った苺みるく,手作りあいすくりん,夏野菜カレー。

手術への興奮と不安を混ぜて溶かしたような高ぶりと、同時に作りたいものと胃袋への配慮をまだ初夏の内から悠々に考える。