「キレイな二重だね」 

当時20歳。初めて出来た彼氏から、付き合って数日のときに言われた言葉だ。そう言った彼は無邪気な笑みをたたえていた。

私は19歳の時に整形している。奥二重だったまぶたを、埋没法(まぶたの中に糸を埋め込んでラインを作る手術)で二重にした。さすがに付き合いたての彼にそんなことは言えないので、曖昧に微笑み返した。 

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プチ整形というのは、なんとも難しい位置にあるな、と感じる。
埋没以外には、ボトックスやヒアルロン酸注射、ハイフなどが該当するはず。私の周りにはやっている子は割といる。だからつい忘れてしまいそうになるのだ。それらに嫌悪感を抱く男性が多い、という事実を。 

何年か前に、5ちゃんねる(当時は2ちゃんねるだった)のまとめサイトで見たスレッドをたまに思い出す。彼女に二重整形を打ち明けられた、という内容だった。打ち明けられた、と言っても、会話の流れで軽ーく言われたような感じだったそうだ。

私には彼女の気持ちがよく分かる。女友達に話すと、よくあることとして受け止められる。ネットを覗けばもっと本格的な手術を受けている人達が沢山いる。実際、費用もダウンタイムも他の施術に比べると控えめだ。そりゃあ軽く言っちゃうよな、と思う。

あと、これは想像だけど、彼に対して誠実であろうとしたのかもしれない。この2人は付き合ったばかりだと書かれていた気がする。早いうちに言っておくべきだ、と考えた可能性もある。 

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しかしスレッドを立てた主は「言わないでほしかった」と書いていた。その事実があったとしても、聞きたくなかったらしい。スレッド内にはそれに共感する書き込みが結構あった。 それを覚えていたというのも、冒頭の彼に本当のことを言わなかった理由の一つだ。言わない方が彼のためにもなるのかもしれない、と思った。 

結局この彼とは3年半付き合った。途中で、別に言っても良さそうだな、と気づいた。この間にボトックスやホクロ除去を受けており、そのことは話していたものの、最初にやんわりウソをついてしまったせいで二重のことだけは言う機会を逃してしまった。結果的に、普通に整形の報告をしているくせにウソはつき続けている、という訳が分からない状態に陥っていた。 

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ああ、生まれつきキレイな二重まぶただったらなあ。せっかくお金を払って手術を受けたのに、前と同じように羨んでしまう。

 世間の価値観はどんどんアップデートされている。若い男性なら、整形していてもそれほど気にしないという人も増えているのだろう。先述したスレッドだって何年も前のものなのだ。

とはいえ、生まれつきの二重まぶたよりも整形によって作られたそれの方が好みだ、という人はいないだろう。一重の方が好きだという人はいるだろうけど「埋没法を受けた後の二重が大好きです!」なんて人は多分1人もいない。いたとしても、そんな人はちょっとイヤだ。 

もちろん、糸を抜く気もさらさら無い。二重まぶたの自分の方が気に入っているのだ。
カミングアウトできない葛藤とともに、今後も私はまぶたに糸を飼い続ける。