わたしは自然にあふれた場所が好きだ。
去年大学を1年間休学し、それぞれ約2週間〜1ヶ月の期間で、“おてつたび”や“ふるさとワーキングホリデー”というものを使って様々な地方をまわっていた。そしてわたしはやっぱり自然が好きなんだなあということに、改めて気づかされたのだ。
そんなわたしだが、大学進学を機に上京するまでは、1日でも早く都会に行きたいと思っていた。生まれてからずっと過ごしてきた地元は大分県で、そこは都会とは程遠かったからである。
テレビで紹介されている食べものやおしゃれな生活用品はほとんど都会にあって、「地方になんて何もない。わたしがほしいものは、ぜんぶ都会にあるんだ」そんなふうに思っている自分がいた。
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そんなわたしは晴れて上京し、おいしいものをたくさん食べて、それなりに充実した日々を送っていた。しかし、久しぶりに地元へ帰省をしたときのこと。わたしは空港のとびらから外へ出たとき、衝撃を受けたのである。
え……都会と空気がぜんぜんちがう!!!空気がとっても澄んでいて、おいしくて、わたしは思わず胸いっぱいに空気を吸いこんでしまっていた。
そして、時間の流れもぜんぜんちがう。東京では気づかないうちに歩くのが速くなり、人混みの中を、だれにもぶつからないようにといつも注意しながらすすんでいた。でも、ここではどれだけゆっくりと歩いても、両手を横に思いっきり広げても、だれにも当たらない。そんなことに、都会に行ってみてはじめて気づいたのである。
また、関東に住んでいる友だちが以前わたしの地元に遊びにきてくれたときのこと。
「ここって、海と山しかないんだけどね」そうやって、わたしは彼女に地元のことを説明した。すると、その友だちは、「え!海も山もあるじゃん!!」と言ったのだ。
たしかに、海と山しかないと思っていたけれど、海も山もあるのか。そんな何気ない彼女の一言のおかげで、わたしは地元のことをもっともっと好きになれた。
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そして去年の夏、地方へ行ったときのこと。わたしは夜、毎日のように星をながめていた。空には同じだけいつも星があるはずなのに、東京にいたころは周りの建ものが明るくって、星なんてまったく見つけることができなかった。
でも、地方へ去年行ったとき、外にでて上を見あげると、そこにはいつも満天の星空が広がっていた。せっかくだからと近くに海があったため、みんなでそこへ行って星をながめることになった。
海の近くの堤防につくと、そこはまっくらで、周りにはなにもなく、ただ波の音だけが響いていた。そしてわたしたちは、その地面に大の字で寝転がった。上を見あげると、そこは数えきれないほどの星でいっぱいで、思わずこれは夢なんじゃないかと思ってしまった。
そこではたまに、しゅーっと流れる流れ星もいくつか見えて、ずっとずっとこうしていたい、そう思った。
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普段、こんなにもゆっくりと空を見あげることなんてなかったな。星はいつも空にあるはずなのに、今までもったいないことをしてきたな。そんな想いで、いっぱいになった。
それからのわたしは、地方のことがだいすきになった。でも、都会にしかない良さももちろんあって、いまでも人混みは苦手だけれど、おいしいものはたくさんあるし、生活に必要なものはだいたい手に入れることもできて、だいすきな友だちもたくさんいる。
都会と地方。どちらの良さも知ることができて、ほんとうによかった。そう心から思うことができた、去年の夏だった。