12月。私たちは期末テストや課題レポートの締切をいくつも抱えながら、通常の授業を受け、文献を探すために図書館へ。と大学構内を行ったり来たりしていた。文系の私たちには、大学構内を移動するだけでも一苦労だ。「ダイエットしなきゃ〜、でも運動したくな〜い」なんてケラケラ笑い合うのがお決まりだった。

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「ねえもうすぐ、クリスマスと年末年始、来ちゃうんだけど!やばくない!?」

食堂で休憩していると、疲れ切った私達の頭は迫り来るイベントを考えることで現実逃避し始めた。各々が、バイトだとか、家で過ごすだとか自由に話していた。その時、食堂のモニターに駅伝壮行会の情報が流れた。すかさず友達が反応する。「駅伝も直ぐだよねー」「お正月の恒例だよねー」それを聞いて私は驚いた。え、駅伝ってお正月の恒例なの?テレビで放送してる?ゴール前だけとか?違う?全部!?……

全く駅伝について知らなかった私は、友達にある程度駅伝について説明をしてもらっても空いた口が塞がらなかった。私の駅伝の印象は、青山学院大学陸上部の監督が毎回不思議な作戦名をつけると言うものだけだったのだから無理もないだろう。

ただ一番驚かされたのは、私の予想以上に駅伝を好きで応援している人が多いと言うことだ。駅伝はマイナースポーツの部類に入るのではないかと思っていた私は黙っているしかなかった。これが私と駅伝の出会いだった。

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新年を迎え、ふと友達の話を思い出した。新年からバイト漬けの私は、テレビを見る時間などなくネットニュースで結果を知った。残念ながら、私の学校は優勝できず何となく残念な気持ちになる。それまで全く駅伝について知らなかったのに不思議なものだ。まあ、また来年頑張ってほしいな。軽くそう考えていた。
だが、駅伝は大会当日だけでは終わらない。駅伝後からニュースはもちろん、様々な番組で特集が組まれるのだ。そこで、駅伝を走ったメンバーの地道で過酷な練習の積み重ねや、その年にかけた想い、周囲の応援、先輩後輩の熱い関係などが明らかにされる。それを見た私はぽろぽろと、泣いてしまった。

当然のことだった。駅伝は他のスポーツと比べて特異だ。

チーム戦なのに個人の責任が重い。テクニックを身につければ勝てるわけでもない。ひたすら同じことを繰り返して、時間をかけて強くなっていくしかない。道は一本しかない。強くなればなるほど追い込まれていく。私が泣いたのは、メンバー達の駅伝までの道のりを見ていて苦しかったからだ。そして、それでも折れずに走り続け、舞台に立った彼らの強さに心を揺らされたからだ。もはや軽い脳震盪だった。

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彼らの中には駅伝の後のインタビューで次の駅伝について言及する人がいる。次の駅伝は10月らしい。もう次のことを考えているのか、苦しい努力をまた彼らは繰り返していくのか。呆然としてしまう。だが沸々と心の奥底から湧いてくるものがある。それは駅伝が終わり数ヶ月が経った現在も時々顔を出す。

「彼らが頑張っているのだから、私も止まっている場合じゃない」そうやって私の背中を押す。それは多分、勇気だ。苦しくて足を止めた時、もう一度歩き出せるように。転ぶのを恐れずに走り続けられるように。彼らの努力が裏打ちしている勇気は強く私をサポートしている。

私は大学生だ。大学構内で選手達を見かけることもある。多くの人に感動と勇気を与える彼らだが、学校で見かける姿は普通の大学生だ。遠目から彼らを見て、心の中で静かに呟く。声をかけたりはしない。なぜなら、いつだって私の隣に肩を並べて走ってくれているように感じるからだ。「ありがとう!」たったそれだけだ。