私は博物館が好きだ。

博物館が好きすぎて、ひとりで色んな博物館を巡ったし、大学では博物館学芸員課程を履修して、博物館学というものを学んだ。
家には色んな博物館の入館チケットが保管されている。私の宝物のひとつだ。

◎          ◎ 

博物館には新たな発見がある。

見たり、聞いたり、触ったりして知らなかったことをたくさん知ることができる
歴史も花も宇宙も知ることができる。
美しくて楽しくて、どきどきして。
博物館は体験できる教科書で、博物館こそ最高の学び舎だ。

博物館学芸員課程には座学と実習がある。
座学では今まで知らなかった博物館の一面を知ることができ、博物館で働きたい想いがより強くなった。
博物館実習では学芸員の方に色々なことを教わった。
人生の先輩から教わる学芸員のお仕事。

難しいこともあったけれど、憧れに近づけている気がして胸が高鳴った。
博物館学芸員の資格を取得できた時には大きな達成感と喜びがあった。

◎          ◎ 

私の学びの先には、夢があった。

私は星座を伝えるプラネタリアンを夢見ていた。
中学生の頃に知った星の物語が美しくて、実際に見上げてみた星空が綺麗だったから、その感動を伝えたいと願うようになった。

星の物語は調べれば調べるほど興味深く没頭した。
星を結んで夜空に描く絵が美しくて、晴れた夜は星座早見盤を持って、夜空に絵を描きに行っていた。

実習の一年後、そんな私は天文台に就職した。
天文台も博物館のひとつだ。
その天文台にはプラネタリウムがあった。
中学生の頃からの夢が叶ったのだった。
両親も、博物館学の教授も、天文学の教授も喜んでくれて、これから始まる新たな生活を応援してくれた。

◎          ◎ 

順調だった。
もちろん最初はミスも多かったけれど少しずつ仕事ができるようになっていると感じていた。
プラネタリウムの解説も自信があったし褒めていただくこともあった。

それでも慢心しないで解説の流れを考え直したり、解説の練習を重ねたりした。
ゴールデンウィークに来館した少女に「お話おもしろかった!」と言ってもらえたときは、思わず笑みが溢れた。

友人には「天職だね」と言ってもらえた。
もっともっと上手くなって、星に興味を持ってくれる人が増えたら…。そんな願いを持つようになり、以前にも増して努力した。

しかし、そんな生活は長くは続かず、病気になってしまい出勤できない日が増えていった。
療養のため、一年で天文台を辞めざるを得なくなった。短い間だったけれど、天文台では大学での学びを活かせたし、新たに多くのことを学べた。学びの濃い一年になったと思う。

◎          ◎ 

現在は全く違う職種に就いているが、後悔はしていない。
大学での学びが活かせる場所は博物館だけではないと知ることができた。
私が得た学びは一生ものだ。

生きていく中で、きっともっと気づくことがあるはずだ。
生きていく中で、私はこれからどんなことを学ぶのだろう。
まったく知らない分野について学ぶことがあるのかもしれない。
今までの学びをより深めたり、誰かに伝えたりするのかもしれない。

学びの先にはきっと何本もの道がある。
どこへ進むべきか迷うこともあるだろうけれど、あの学びを得た私なら、未来で何を選んでも大丈夫。
「学び」はそんな自信にさえなってくれている。