バンドを組んでもうすぐ1年になる。小さい頃から歌うことが好きで、社会人になってからはアコースティックライブが主な活動だった。1年ほど前のある日、またバンドを組んでみんなで音楽を演奏したいと思い立ち、今に至る。

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最初はライブを主催してくれる知り合いに頼み、ギタリストとベーシストを紹介してもらった。あとはドラマーがいればバンド結成できると思った私は、大学時代に一緒にバンドを組んでいたドラマーのNちゃんに声をかけた。
Nちゃんは喜んで参加したいと言ってくれてとても嬉しかった。これでバンド結成できると思われたが、ギタリストとベーシストが突然音信不通になった。

その時点で、Nちゃんがいなければ諦めていたと思う。でも、Nちゃんがとても前向きだったので、私もやっぱりバンドをやりたいという気持ちを捨てきれず、インターネットを使って自力でメンバー集めを始めた。
Nちゃんはよく、「明日香が誘ってくれたからまた音楽をやれるようになった」と言ってくれるが、私からしたらNちゃんがいるおかげでバンド結成までこぎつけたので、お礼を言いたいのは私の方だ。

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とはいえメンバー集めは難航した。バンドメンバー募集の記事を書いたり、昔の知り合いに連絡したり、音楽教室に電話したりして探した。そしてギタリストが見つかり、顔合わせをすることになった。待ち合わせ場所に向かう途中で、その子からの連絡が途絶えて焦った。試しにラインのスタンプを送ってブロックされていないか確認したら、ブロックされていた。電話で話した時はすごくやる気がありそうな感じだったのに……キーボードも同じことがあり、私は上手くいかないことが多すぎて泣いた。

それでも懲りずに、100件メールを送って1件反応があればいいくらいの気持ちでメンバーを探し続けた。そして、ギタリスト2人、ベーシスト1人が見つかった。しかもギタリストのコネでその数ヶ月後には初ライブをすることができた。

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初ライブは緊張より楽しさの方が大きかった。今まではアコースティックで1人で歌っていた私は、5人で作れる音楽、5人だから生まれるグルーヴに感動した。
正直なところ、もういい大人だし、私が歌っても誰も聴いてくれないだろうと思っていた。それならなんのために練習するのか、お金にもならないのに続ける意味はあるのだろうか、とライブ前は思っていた。しかし、実際にライブに出てみて、私は元来スポットライトを浴びることが好きだったこと、人と音楽を作る楽しさを思い出すことができた。正直言って、ライブの映像を観ると本当に私は下手だなと思ってしまう。けれど、自分の出番が終わったあと、たくさんの人が声をかけてくれて、すごく良かったと言ってもらえた。完全に自己満足で始めたことだけど、知らなかった人たちにちゃんと私の声が届いて、新しい人生の楽しさを知った。

活動を続けていく中で、みんなで何かを作ることは音楽でも仕事でも難しいことなのだと感じた。メンバーによっては他のバンドも掛け持ちしていたり、仕事が忙しかったりで、社会人バンドはただ活動を続けるだけでも奇跡なんじゃないかと思うくらい難しい。けれども、ギタリストは本当に楽しそうにギターを弾いてくれるし、ベースのリズムの安定感はすごいし、ドラムの音があるからみんなが足並みをあわせることができる。お互いの「音楽が好き」という気持ちをひとつの曲が繋いでいく。そしてその音楽なくしてはあり得なかった出会いがたくさんあった。

私は今まで、ただ自分が悲しいとか、嬉しいとか、吐き出すために歌ってきた。けれど、今は楽しむため、そして楽しませるために歌っている。

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あのとき、当初のバンドがポシャっても諦めなくて良かった。何の意味があるんだろうと考えてしまい、立ち止まってしまうことは生きているとたくさんある。でも、一歩踏み出してみたら、見たことのない景色に出会えた。人間同士だからこれからどうなっていくのかわからない不安はある。けれども、その都度話し合って、音楽を作っていきたい。それだけの価値ある時間に巡り会えた。しっかりしていないリーダーだけど、これからも変わらないメンツで、音楽を作っていきたい。