その日、私はSNSのアカウントを5個消した。同時に彼の連絡先は全てブロックした。私は、私が大事にしたいと思う人を大事にし、私も大事にされたいと思ったのだった。

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高校の部活が同じだった男の子がいる。繊細で、人の痛みがわかる優しい人だ。それゆえに、悩みやすい性格でもあったと思う。その人柄がとても好きだった。彼と付き合っていた期間もあったが、「恋愛がよくわからない」と彼から言われ、高校在学中に別れた。それでも、恋愛感情抜きでも彼の人間性が好きで、私と彼の友人関係は高校卒業後も続いていた。

大学2年のころから、彼の様子が変わり始めた。私と彼はお互いにパーソナルスペースに踏み込んだ相談もするくらいの信頼関係にあったが、この頃の彼は、自分の在り方や家族関係の悩みについて話すことが多くなっていた。連絡も毎日来ていたかと思えば、突然数ヶ月も音信不通になったり、彼の方から付き合ってほしいと言ってきて、その数日後には別れてほしいと言われたりすることが何回も何回も繰り返された。

もう7年はずっとその状態だった。その不安定さに振り回され、私の心はボロボロだった。でも、彼の方がつらい思いをしていると思っていたし、彼の優しい性格は知っていたから、どんなに振り回されても変わらない態度を取っていた。ある日、彼から「しばらく連絡を取ることを控えたい。でも、僕は君以外を好きにはならないし、僕の心が回復するまで待っていてほしい」と言われた。このときの私たちは付き合ってはいなかったけれど、また前のように楽しく話せるなら、私は彼の言葉を信じようと思った。

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それから半月ほど経った。この日、私は知ってしまった。彼に恋人がいることを。恋人と上手くいってない悩みを、彼はSNS上で毎日のように投稿していた。ショックだった。確かに、私たちは付き合っていない。でも、「待っていてほしい」というあの言葉は?「僕はとにかく人と話すのがつらい。君なら僕の気持ちをわかってくれると思う」と言っていたではないか。7年以上振り回された気持ちの疲労もあり、一気に彼のことが信じられなくなってしまった。ずっと積み重なっていた苦しい気持ちが爆発した。

そこからの私の行動は速かった。彼との連絡手段を絶ち、これを機に人間関係についても見直すことに決めた。主にSNS。用途ごとに使い分けていたSNSは、アカウントは10個を超えていた。それを半分以上減らし、つながっている人も確認した。たくさんの人とつながらなくていい。私はこの身ひとつで身軽に生きていきたい。私が大事にしたいと思えて、そんな私を大事にしてくれる人とつながっていられるならばそれでいい。すり切れるだけの関係はもう十分だった。

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何の後悔もなかった。むしろ、気がかりなことや入ってくる情報量が減って、頭がすっきりして動きやすい。何より心が元気だった。手放したことがきっかけなのかはわからないが、仕事で新しい企画に誘ってもらったり、趣味に没頭できたりと人生が好転し始めた。重い衣服は脱ぎ捨てた。どんどん進んで行けそうな予感がしている。