電車のホームで、パン屋の中で、仕事場、家の中。電車を待っている間、大好きなパンを息するように手に取る瞬間、仕事をしている時、家でぬいぐるみ達と戯れている時―――。

まぁそれはどこだって何をしている時だってなんだって良いのだけれど、私は先月、確か電車のホーム内をせかせかと歩いている時、自分の腕がふとした瞬間に目に入っては急いでいるのにも関わらず思わずハッとするようにじいっと腕の色に目を落としてしまった。
色が明らかに内側の白さとほぼほぼ変わらなかったからだ。 

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私は小さな頃から幾つものコンプレックスに悩まされていたものの、その中でも上位に位置していた悩みの1つに肌の黒さがいつだって頭の中にはあった。

だから季節が夏に近づくと毎日が辛かった。
紫外線を纏った刺激のある直射日光が容赦なく四方八方から私に降り掛かり、それは例えばどれほど効果的と言われている人気の日焼け止めを塗っていたとしてもその予防なんて有って無かったかのように意味を無くしてはあっという間に肌が黒くなっていき、気付くと私は毎年笑ってしまうくらい腕も顔も脚すらも真っ黒になってはすっかり小麦肌=私なのだと周りに定着していった。勿論肌の体質は言うまでもなく焼くとすぐに黒くなるタイプだった。

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だから学生時代、いつだって色が白かったクラスメイトの言う"焼けると赤くなるだけ"という言葉には密かに嫉妬しか私の中には生まれなかった。

赤くなる子の苦労も知らずに(でも正直今でもよく分からなかったりする)単に赤くなるだけで焼けない,特に何もしていないという子達には清々しいくらい悪意しか持てなかった。
黒くなるなんていいじゃん、羨ましい。なんて言われた日には暑い時期にも関わらずサァァ…と体の温度が悔しさの塊でぐっと下がった程だった。

それぐらい私にはすぐに焼けてしまう体質、肌の白さというものには悩みと憧れが付き物だった。言うまでもないだろうが、小麦肌に嫌悪感がある訳では無い。あくまでも私自身の強い好みの上での深刻な悩みだった。

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そんな中、今年に入ってからメイクをする前には必ず一通りの流れとして日焼け止めをファンデーションの代わりに塗り、加えてサプリメントも同時期に飲みだした。日焼け止めは時期に関係なくケアをしておこうという気持ちも勿論あったが、それよりもファンデを塗らない代用という意味合いの方が強く、サプリに関してはコチラも同様、確かに肌に関して期待を程よく込めつつもどちらかというと内面に気を遣いたくて飲みだした物だった。

だから日焼け止めもサプリも共に値段が高くなく、あくまでも気軽に飲める価格の物を1本、そしてサプリは3種類買って飲み続けた。
そんな毎日を現在進行として恐らく5ヶ月程は日課として続けていき、そうして冒頭に私は戻ってくる。

肌の白さをこうしてエッセイに書き落としている今でもすかさず確認しては1人優越感に浸っている。高校からの付き合いである親友にも意見を聞いた所そういえば白いな杏ちゃんとしみじみとした顔で頷いてくれた。
彼女とは歴が長い。こんな事で嘘なんぞつきはしないからやはり私は確実に色が白くなったのだ。

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私は嬉しかった。ずっとずっと幸せな気持ちで心はニコニコしている。今までサプリという物に興味はあってもやはり信憑性,習慣化,値段云々の気持ちの方が強く今まで単に日焼け止めを塗るだけで過ごしてきたが、こうしてきちんと続けていれば必ず効果は結果として着いてくるのだと尽く思い知ることが出来た。

その意味には例えどんなに高価な物を購入したとしてもすぐに結果を見出そうとする気持ちでは上手くいかず、必要なのは当たり前のように気長に続けていけるその積み重ねなんだということであり、そしてそれはよくよく考えれば110キロから50キロまで落とせる事出来た私にとってはなんて事のない小さな努力だったのだ。

当然、私はこれからも季節関係なく日焼け止めは塗っていく。相棒にしたサプリメント達も出来るだけ欠かさず飲んでいく。それに加えてこの夏はアームカバーに日傘、帽子だってなんだって身につけて外の日射と紫外線達と戦っていくつもりだ。コレが所謂3ミリだけ新しくなった自分の心持ち、なんだと思う。