「中国語の勉強なんて将来何の役に立つんだよ」大学1年の冬、ダンスサークルの同期から言われたことだ。

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私が所属する学部は2年から専攻に進むカリキュラムで、1年の終わりに専攻決める必要があった。私は中国語の授業で劇の翻訳をした際に、由来も文法も異なる言語の翻訳の難しさや言葉の先にあるニュアンスを掴む面白さに魅力を感じ中国文学専攻に進むことを決めた。
それをサークルの合間の世間話の合間に何となしに伝えたところ、冒頭の発言をされたのだった。私は何も答えられなかった。彼の言うとおり大学卒業後までは考えていなかったし、自分の選択が幼稚で恥ずかしく感じてしまったのだ。

悔しかった。悔しかったからがむしゃらに勉強した。語学、文学、映画、文化、歴史を学び、近代文学の卒論を書いた。プライベートでは翻訳のアルバイトができるまでになった。

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「良い大学に行ったのにWEBサイトの制作会社なんか行くの?」就職先が決まった時に友人から言われた言葉だ。

私は中文学と擦りもしない受託のWEBサイトの制作会社でWEBディレクターになることを決めた。ダンスの活動から何かクリエイティブの仕事につきたいという思いがあったのと、自分の知る「中国」を軸に選択してしまうと自分の視野が狭くなるような気がして、全く異なる世界に飛び込むとこで自分の世界を広げたいという思いから制作の仕事を選んだ。周囲に同じような就職をする人がいなかったこともあり、専門的な就職先は勇気のいる、将来どうなるか想像できない賭けにも近い選択だった。

友人から先の発言をされた時、また何も言えなかった。周りは金融・商社・広告代理店など大手で有名企業の就職ばかり。惨めで自分の選択が間違っているような感覚になった。
なら極めるまでとがむしゃらに働いた。何十もの案件を経験させてもらって、最終的に設計・分析・制作と幅広く対応できる、プロジェクトのリーダーを務めるまでになれた。

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「仕事の経歴の評価はもちろん、大学の専攻が中国関連だったことも興味を持たれているみたいですよ」今年の1月、転職エージェントから言われた言葉だ。最初に就職したWEBサイトの制作会社で気づけば6年従事していた。今年で30歳、自分のキャリアを見据えたときに新しい環境でWEBや制作に限らずさらに幅広い分野の知識や経験が必要と考え転職活動を始めた矢先だった。とあるメーカーのインハウスのWEBディレクター・プロデューサーの募集だった。加えてそこは中国でシェアが多い会社だったのだ。

ただの偶然かもしれない。ちょっとラッキーだっただけかもしれない。でも、私にとっては運命で、必然で、今までの人生を肯定された瞬間だった。

今はそのメーカーの社員として新たなキャリアを始めている。WEBや制作に限らず幅広く業務を経験させてもらっている。その分自分の経験不足な面も痛感するし、語学やマーケティングなど勉強しないといけないことは尽きないし、勉強したいことがどんどん増えていく毎日だ。

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今思えば否定された自分を正解だと信じたくて必死だったのだと思う。プライドやエゴなども含む決して綺麗ではない原動力だとしても、学び続けていったらちゃんと結果が結びついた。何事も経験で勉強しづつけることが気づけば習慣になっていた。
これからどのようなキャリアや人生を歩むのだろうか。具体的な計画はあえて立てていない。興味のあることはとことん学び、自分に正直に進み続けていれば、きっと私にしか送れない面白い人生が待っているはずだ。

専攻を馬鹿にされて悔しかった私へ。
就職先を否定されて悲しかった私へ。
諦めずに学び続けてくれてくれてありがとう。