「学びとは、真似ることです」
いつだったか、学校の先生が言っていた。

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確かに、連続逆上がりができる人を見て、「すごー!どうやってやるの!」と何回もやってみせてもらったっけ。
気づけば見て学ぶ事が多かったから、説明書などの類は苦手になってしまった。文字が頭の上をスラスラ通り過ぎて行く。

そうやって学生時代は、先生や友人の真似をすることによって、意外と色々なことがそれ相応にできるようになり、味をしめてしまった。

社会に出てすぐ配属された部署は、人が少ない割にやるべきことが多く、忙しそうな先輩に聞く時間さえなかった。一緒に配属された同期と、見よう見まねで仕事を身体に叩きこんでいった。

しかしその後部署異動になり、せっかく覚えた仕事とは全く違うことを一から勉強しなければならなくなった。ありがたいことに、今回の部署は仕事量がそこまで多くなく、先輩にもマンツーマンで教えてもらえる環境だった。

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「これってこういう意味でしたっけ?」
「なんかエラーが出ちゃうんですけど、どうしてでしょう〜」

事ある毎に隣にいる先輩に声をかける。
優しく教えてくれていた先輩だが、配属されてから何週間か経った後「一回自分で調べてから聞こうか」そう言われた。

人に聞く癖ができていたから、「自分で調べてやってみる」という考えが薄れていた。学生の時はそれでも良かったのかもしれない。友人に聞けば、自分のできる事を聞かれてむしろ喜んで教えてくれたし、祖父母は聞かなくても教えてくれたし。

仕事量が少ないとはいえ、先輩だってやるべきことがあったはずだ。いちいち私の質問に答えてばかりいたら、手を止めなければいけない。
聞かなければわからないことならまだしも、調べたらわかることまで全部、聞いてしまっていた。

いつからか、学ぶこと=真似ることではなく、学ぶこと=人に聞くことに変換されていた。

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それからは、人に聞く前に自分で調べる癖をつける特訓(大袈裟かもしれないが、私の中では大きな変化だった)が始まった。

何度も先輩に声を掛けかけたが、資料を見たり、インターネットで調べたりした。それでもわからない時は声をかけるが、質問の仕方を変える努力もした。
答えを丸投げするのではなく、「調べたらこう出たんですけど、こういう意味であってますか?」と確認だけにするとか。

そんなの常識じゃん!と思われる方が多いだろう。
先輩も、なんでこんな常識のない人が配属されたんだろう、と思ったかもしれない。それでもそう言わず、優しく私を変えてくれた。先輩には本当に感謝している。

私の頭は本当に楽をするのが好きなようで、今でも気を抜くとすぐに人に頼ってしまう。特に仕事ではない空間ではそれが抜けない。仕事じゃないならいいか、と思ってしまうこともあるけど、普段から気をつけていないとすぐ元の私に戻ってしまう。

それに自分で調べたほうが、頭にも残りやすい。
今は特にYouTubeとかで検索すれば、動画で見て学ぶこともできる。ありがたい世の中だ。これからもいろんなものを見て、考えて、調べて、真似び続けたい。