何気なく見ていたSNSで見つけた、偏見まみれのつぶやき

地雷。それは地面に埋めて爆発する兵器の他、ある人にとってどうしても許せないことを意味している。人によって地雷は様々で、いつ地雷を踏み抜くかわからない。
そして、私にも地雷がある。先日、その地雷が大爆発しそうになった。それは「発達障害」についての話だ。

ある日、いつもの様に何気なくSNSを見ていたら、かつて私を部活でいじめていた先輩方のつぶやきが回ってきた。そういえばミュートにしておけばよかったな、と思いながら彼らのつぶやきを見てしまった。
そこに書かれていたのは、
「僕ってADHDの気があるから人が言い返せなくなって困るまで問い詰めないと気が済まないんだよね笑」
「私は発達障害だから社会不適合者だしSNS上でも公でも人の悪口たれ流さないと仕方ないんだよな笑」
その他のいくつかの彼らのつぶやきを見た。ここには書けないくらいの偏見まみれの言葉が並べられていた。私は手に持ったスマートフォンをぶん投げたくなった。心の中で色んな言葉が胸の中を駆け巡った。

「笑」ってなんだよ。発達障害を馬鹿にするな。
発達障害は、つぶやきで書かれていたような「性格が悪くなったり、人に危害を加えたりする病気」じゃない。診断を受けずにファッションで名乗るな。本当に日常生活で困っているなら、精神科に行かないのはなぜ?発達障害は自己承認欲求を満たすための道具じゃない。人とは違う私(笑)のアイデンティティ付けの道具じゃない。あなたたちの加害性は「自称発達障害(笑)」が流行る前からでは?発達障害に対する間違った知識を垂れ流すな。誤解が生まれてしまう。当事者が傷つく。そもそも発達障害は「免罪符」じゃない。

私は怒りを抑えるため、必死に出てきた言葉をスマートフォンのメモに書き連ねた。皮肉にも発達障害について研究を進める動機になった。

発達障害の子どもを支援するなかで、専門的に学ぼうと決めた

かつて、私は研究で通級や特別支援学校に行ったことがある。そこには発達障害を持つ子どもたちが大勢いて、一人一人先生がついて支援を受けていた。
私自身も子どもたちの支援に携わることもあった。子どもたちがキラキラした笑顔で日常について語り、一生懸命に課題に取り組む姿を見た。対して、日常では体の疲れやすさや苦手なことで困り事を抱えていた。
彼らにとって少しでも辛い環境を取り除くことは出来ないだろうか。辛い環境さえ無くなれば、きっと自分らしく学べることに繋がるのではないか。私は発達障害について専門的に学ぶことを決意した。

まず、発達障害の診断は簡単につけられるものではない。ゆっくりと時間をかけて行われる。正式な診断結果が出るまで、数ヶ月かかることもある。私の知っている限りでは、様々な検査や面談などを通して総合的に診断していくそうだ。そして、発達障害の特性として、日常生活で強く支障が出た時に診断されると言われている。
そして、これだけはっきりと言えるのは、発達障害の診断基準に「他者に危害を加えること」「自分を特別な人間だと思い込むこと」はない。また、発達障害の中には主にADHD、ASD、LDとあり、それぞれ強く出る特性も異なってくる。

そう言えば、ネット上の「自称発達障害」がやたらADHDを名乗りたがるのはなぜだろうか。
「あなたの言っている特性からして、また別のものでは?」
「日常生活に問題が無いなら良いのでは?」
色々文句を言いたくなったが、割愛する。

診断以上に、支援に繋げてより生きやすくなることが大事

しかし、ネット上では発達障害=人の気持ちがわからないサイコパス、人に危害を加える危険人物であるかのような書き込みが絶えない。偏見や誤解のもととなる情報を平気で垂れ流している。彼らの書き込みもそうだ。「アスペ」や「ガイジ」という言葉も大嫌いだ。
特別支援について勉強して、実際に子どもたちと関わってきた身としては、とても許し難い。当事者がネットを見たらどう思うか考えたことがあるのだろうか。きっと自分たちの特性が社会で忌み嫌われていることや、ネットのオモチャにされていることに悲しむ人もいるのではないか。
自分の特性を受け止めて、出来ることと苦手なことを少しずつ知りながら真面目に生きている発達障害の当事者からしたら、とても迷惑な話だ。

私は、発達障害の診断は、診断されること以上にその後の支援に繋げて、当事者がより生きやすく生活出来ることが大事だと考えている。
きっと、教育学や心理学を学ぶ学生のほとんどが、発達障害について学ぶ機会があるだろう。特に教員免許を取得する学生なら尚更だ。
発達障害に対する正しい知識を広めていくこと、そしてもし当事者と関わる機会があればどう支援をしていくかを当事者と共に考えることが、その学問を学ぶ立場としてやるべき事のひとつではないかと考えている。私も勉強中の身だから偉そうなことは言えないが。

ただ、これだけは敢えて強く叫ぶ。
発達障害をおもちゃにする人へ。
発達障害を免罪符にするな。どうしても困ってたら精神科に行け。
精神科に行って発達障害と診断されないことがこわいんだったら、とっとと発達障害をおもちゃにすることをやめろ。
私たちはそんな生ぬるい世界で生きてるわけじゃないんだよ。