大学生のとき、私ははじめて海外に行った。行き先はアメリカ。大学の研修ではあったものの、初めて海外に赴いた瞬間はとてもワクワクしていた。
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これまでにも、海外に行くチャンスはあったものの、子どもながらに怖いと感じていた私は、頑なに首を立てには振らず、その場で足に根を生やしていた。英語が話せない、他の言語であればなおさらわからない、異国の地というだけで怖い、そんな思いが私の中を駆け巡り、海外に行くことに対して積極的になれなかった。
習い事で英会話をしていたことはあるが、それだけでは流暢に話せるようにはならず、英語へのハードルが低くなっただけ、受験英語に取り組みやすくなっただけだった。浅はかな単語の知識だけでは外国に行けないと、日本に閉じこもるような勢いで海外への関心を消した。
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しかし、大学生になり、周りが留学や海外旅行など行動範囲を広げているのを目の当たりにして、さすがに1度くらいは海外に行っておくべきなのではないか、と思うようになった。語学を専攻したわけではないが、学部の研修として海外に行けるチャンスがあったので、迷わず参加を決めた。これが人生で初めての海外。行き先がアメリカであったことも、チャレンジしようと思ったきっかけだ。海外といえばアメリカ、という方程式があったため、外国として代表的な場所で研修ができると思ったのだ。アメリカの町並みも、文化も、なんとなくテレビで吸収していたこともあり、怖さよりも楽しみのほうが勝った。
実際に研修に行ってみると、思っていたよりも怖さはなかった。言葉が通じなかったたらどうしよう、トラブルに遭ったらどうしようなどの懸念はほとんどなく、バスの窓から見える街中を眺める余裕さえあった。研修としてアメリカへ行き、友人たちとほとんどの時間を過ごすから安心していたのかもしれない。それでも海外に対する恐怖心や抵抗は圧倒的に少なくなっていた。
研修の滞在期間は1週間。研修期間が終了する頃には、聞こえてくる言葉に慣れ、行動サイクルにも慣れてきたと感じたところだった。1週間でここまで順応するとは思っていなかったので、自分自身で感心していたくらいだ。研修は参加して良かったと本当に思う。何も知らないまま大人になり、社会に出るのとは大きく気持ちが違っていたと確信を持っている。
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今、仕事をしていて思うのは、外国人の対応をするときに英語が少しでも話せたらいいな、ということ。どちらかというと中国語のほうが需要があるような気もしなくはないが、最低限英語が話せると伝えられることも増えそうだと感じている。私たちが伝えたいことが少ししか伝わらず、思うように意思疎通が取れないこともあるので、もどかしく感じることがある。
世界のボーダレス化が進み、どの国でも行こうと思えば行ける環境が整っている今だからこそ、コミュニケーションをしっかり取りたいと思う。
まだ個人的に海外に出かけたことはないが、いずれは行く機会があればいいなと思う。そのときには自分の意思を伝えられる表現を身につけていたい。日本にいて、外国人に駅までの道を教えられない私は、まだ海外で一人旅をする資格はないだろう。乗り越えられる気もしていない。時間が経てばさらに私と世界のつながりが大きくなっていくだろう。
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これからもっとつながりは強化され、自然とグローバルな社会になっていくと予想する。英語からはかなり遠ざかっているが、今回をきっかけにちゃんと学び直して見ようかとも思っている。海外に旅行に行きたいからとかではなく、自分の気持ちを伝えられるようになるために。子ども頃に思っていた、漠然とした言葉が話せないから行きたくないという思いを払拭したい。海外に行ったという成功体験が確実にあるので、ハードルは下がっているはずだ。
次は個人的に海外を楽しみたい。何か新しいものを得られるワクワク感とともに、来る日に備えよう。