去年の秋頃、恋人探しのために短期間だけマッチングアプリを使っていた時期がありました。当時働いていた職場では対象となる異性はほとんどおらず、いるのはもう既に枯れ果てたようなおじさんばかり。泣く泣く友人に紹介を頼んでも、皆ただ口を揃えて「探しとくね〜」の一言、その後の音沙汰は特になし。そんな状況では他に頼みの綱は残されておらず、とうとう痺れを切らした私は予てから気になっていたマッチングアプリという代物に手を出す事にしたのでした。

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とはいえ、アプリに関してはズブの素人であったため、経験者の友人のアドバイスの元、自分の写真や自己紹介文等を恐る恐る登録していったのですが、まず驚いたのは始めた直後から割と異性からのいいねが届いた事です。女性は男性よりもいいねされやすい、という話は何となく聞いた事はありましたが、これなら意外と早く良さげな相手も見つかるかも!と開始早々希望に燃えたのをよく覚えています。

その後、いいねが来た中から写真やプロフィールを精査し、何人かをピックアップ、他にも気になった相手に自分からいいねを送るなどしてマッチした数人とメッセージのやり取りを進めていきましたが、その中で特に一人、会話のテンポや盛り上がりも良く、何度か通話を交わした後に、もし良ければ今度会いませんかとなった人がいました。

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アプリの人と直接会う、これは私にとって非常にハードルが高い事ではありましたが、彼氏候補を見定めるためにはやはり実際に会うより他はない!と腹を括り私たちは互いの住んでいる場所の中間地点で会う運びとなったのです。

そして当日、今にも倒れそうな緊張感を抱えながら私は待ち合わせ場所に向かったのですが、そこに立っていたのは写真とほぼ変わらない爽やかな風貌をした好青年でした。

「あ、〇〇さん……ですか?私、やり取りしてる〇〇です」

「あ、はい!〇〇です。どうも初めまして」

多少しどろもどろはしつつもこんな感じで無事対面は成功、その後は彼がオススメだという定食屋に共に赴き食事をしました。本当はそこで解散をする予定でしたが、思いの外会話が盛り上がり、その後は近くのチェーン店のカフェに立ち寄りなんと2軒合わせて計5時間近くも話し込んでいたというのだから驚きです。初回でそれだけ長く相手との会話が続いたという事もあり、帰りの電車に揺られながら、想像以上に上手くいった本日の密会に私は一人ほくそ笑んでいました。

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互いに自分のボロが出ないよう気を遣いまくっていた、という点は勿論あるでしょうが、それでもあまり肩肘をはる訳でもなく、比較的自然な状態で相手との会話を楽しむ事ができていたし、帰り際にはじゃあ次は再来週くらいにまた会いましょう、という約束まで取り付けていたのです。それらの点を踏まえ、私はその時点でえ、逆に最初からこんなに上手くいっちゃっていいの!?と乱舞せんばかりの喜びを抱いていました。

が、しかし、やはり人生というのは複雑であり、中々一筋縄ではいかない物ですね。その時はこの人とこのまま上手くいき、恐らく3回目くらいのデートで告白されて付き合うのだろう、という頭お花畑な夢物語を信じて疑わなかったのですが、数日後にはその願いは儚くも打ち砕かれる事態となったのでした。

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理由は、相手のかまってちゃん度が予想以上に激しく、こちらとの温度差がかなりあったためです。思えば直接対面を果たす前から約束をしていない時以外にも電話がかかって来る事が数回あり、その時彼は「自分、人が好きで。一人暮らしをしている事もあって人肌恋しくなるとすぐに誰かと電話したくなっちゃうんだ」と話していました。その時はへー、そうなんだくらいでそこまで深く考えなかったのですが、直接会い長時間語り合ってもなおその日の夜にまた電話がかかってきた際は、私は彼に対する違和感を感じました。その時は15分足らずで通話は終了しましたが、その次の日も、そのまた次の日も彼からのコールは止まず、元々そこまで人との通話が得意でない私はその時点でもう内心辟易としており、もしこの人と付き合ったらこれから毎日こんな日々が続くのだろうか……と最早戦慄を感じていたのです。

そういった思いが相手にも伝わったのでしょうか、通話をしてもあまり会話が盛り上がる事はなくなり、段々私も彼の相手をするのに疲れてきて、電話がきてもスルー、メッセージの返信速度も互いに日に日に低下、あんなに盛り上がっていた気持ちがまるで嘘のよう、最終的には次の再会は果たされる事はなく、彼との関係はあっさり終了する運びとなったのでした。

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いくら一度会って好印象を持ったとしても、やはりその程度では人の本質は見抜けないものですね。しかし、付き合う前の早い段階でその人の素性が分かった事は、まだ幾分救いようがあったのかなとも思います。