私は、オーストラリアに留学したことがある。三か月という短い期間ではあったが、今振り返っても、人生の中で一番濃い期間だったように思う。

◎          ◎

私は、英語がそれほど得意でもなければ、人見知りだった。そんな私が、オーストラリアの高校に行くのを決めたのは、自分に自信をつけたいという想いを持ってのことだった。

留学初日の事。今でも鮮明に覚えている。当時の私は、一人でも友達を作りたい一心だったので、近くにいた子に、簡単な英語で話しかけた。すると、「あなたアジア人?英語、聞き取れない」と言われてしまった。その子の目線は、冷たく、その一瞬でも距離を置かれた気がした。それから英語を話す事が怖くなってしまった。英語が流暢ではない事は自覚していたので、そこにショックを受けたというよりも、アジア人で、線引きされてしまったことの方が悲しかった。

日本にいた時は、自分がアジア人であることに対して、何の意識もなかったので、初めての感情で心の整理がつかなかった。

◎          ◎

初日の夜。もう帰りたくて仕方なかったが、応援してくれている親と友達の顔が思い浮かんで、この状況でも乗り切ると心に決めた。そう決めて、想いをひたすら日記に書いてから寝た。

このことがあってから、よく周りを見るようにした。確かに、ランチの時も、朝の自由時間の時も、授業の時も、アジア人同士、欧米系同士というように完全にグループが分かれていた。私は、なぜこのようになってしまっているのか不思議でたまらなかった。それぞれのバックグラウンドに偏見を持つ何かがあったのか、それとも同族属性の仲間意識のようなものなのか。日本は、多国籍国ではないので、中学高校にも、海外の方がいるだけで、マイノリティーになるが、オーストラリアはそこが異なる。

留学に行く前、ネットで調べた時には、多国籍国で、皆コミュニケーション能力が高く、仲が良いと書かれていたので、現地に行ったからこそわかることはこういうことかと実感した。

◎          ◎

私は、最初、アジア圏の子達と仲良くしていたが、クッキングの授業で日本料理が好評だったことをきっかけに、オーストラリアの学生とも仲良くなった。

会話していく中で、気が付いたことがある。それは、私が話しかけるか躊躇し、おそるおそる話しかける様子が、彼女たちを不安にさせてしまっていたのかもしれないということ。彼女たちも元々は、海外の方と関わる事がなかったと考えると、状況は私と同じ。やはり自分主体で考えるは良くない。

私が無自覚だっただけで、お互い、最初会った時に一線を引いてしまっていたのだ。

◎          ◎

三か月という短い期間だったが、年分くらいのことは学んだと言える自信があるし、本当に留学に行って良かったと思う。世の中には、色々な人がいて、それを受け入れる寛大な心が私も含めすべての人に必要になる。一人ひとりがその意識を持てば、偏見のない平和な世の中に近づくのではないだろうか。

これから留学に行く人。あなたにとって人生での素敵な経験になりますように。