「マッチングアプリは一番結婚から遠いよ」

この言葉で私は高校からの親友と縁を切った。
勿体無いなと思いつつ、私にはどうしても受け入れ難い言葉だった。

私は恋愛経験が少なく、色んな人に騙され、男性から好かれないことが長年のコンプレックス。それを隠して生きてきたものの、20代も後半にさしかかり、アラサーといわれる年代にってから、どうも自分に嘘をつくことができなくなってきていた。

「女性ホルモンの影響だよ」

皆そううし、実際そうなのかもしれないが、そう言われると、じゃあのこの焦りはどこに持っていけばいいの?と感情が迷子になる。
私が欲しいのは、解決策だ。

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私は夜な夜な結婚に焦っては、マッチングアプリを入れては消してを繰り返していた。
アプリを入れると、少しだけ心が楽になるのだ。結婚に向けて努力している自分、結婚するための選択肢を持っている自分が認識できると心が安定した。
実際に会うことはない。なんならメッセージのやりとりもしない。
携帯にアプリを入れている、その状況が私を安心させ、1人寂しく携帯を眺めたまま眠れない夜をなんとかやり過ごすことができる。

アプリを入れていることはなんだか恥ずかしくて友人に言うことができずにいた。
やはりどうしても、普通の恋愛ができなかった負け組、という印象が拭えない。

東京にいるとそんなことなかった。初めは皆抵抗があったものの、徐々に口コミでアプリの良さが広まり、友達のほとんどはアプリで出会うようになった。アプリの出会い以外の結婚なんてもはやないんじゃないかというくらい、皆アプリを使っていた。

でも地元は違う。
東京の流行から、体感2年は遅れている田舎町。アプリへの抵抗感が皆残っている。
男性に愛されない、そんなどうしようもない焦りから、とある夜に親友にアプリを入れてみたことを言ってみた。
翌日、親友から連絡が来ていた。

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「昨日は焦ってるみたいだったから言わなかったけど、アプリは結婚から一番遠いよ。そもそもアプリを使って危険な目に遭った時、逃げる方法知ってるの?まずは信頼関係の作り方を覚えることだからって私の彼氏も言ってたよ。そもそも結婚する必要なんてないよ」

どうせあんたは田舎で生きてきたから東京のことわからないんでしょ。
そんな嫌な感情が溢れてくる。
私はそっと友人をブロックした。

そういえばこの友人は彼氏が絶えることはなかった。何人もから言い寄られ、最後は自分で選んでいた。いかに愛されているかをよく自慢していたし(少なくとも私にはそう思えた)、結婚も決まっている。

なんで友人に結婚する必要があるかないかを決められなくちゃいけないんだ?
一度そんな感情が現れると、そう言えばあの時私のことバカにしてたな、と色んなことを思い出してしまう。

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あれから私はアプリを使ってはいない。
メッセージが返ってこなかったらどうしよう、会ってくれなかったらどうしよう、会った後2度目がなかったらどうしよう
私のプライドは守り切れるのだろうか?
その不安感から、そもそもアプリを開くこともできなくなっていた。

こんな感じじゃ、彼氏なんてそもそもできるわけないわな、と嫌な現状が見えてくる。
そもそもアプリを使って彼氏ができる人は、それまで普通に恋愛をできていた人が出会いの場のために利用した時にできるというわけなのだから。
私はアプリを入れてみたものの、残ったものは何もなく、ただ親友と自信を失うだけだった。