今年になって、もう年齢も年齢ということで、初めてマッチングアプリを始めた。もちろん、結婚を見据えた本気の出会いを求めて。
これまで、学生生活のほとんどを女子校で送ってきたことから、なんとなく同世代男性とのコミュニケーションは苦手だった。

飲み会の席で、なんとなく第一印象で好かれることは多い。でも、いざ、それより深い関係になろうとする時、私はたとえ告られても、どこか恋愛とは一線を引いて過ごしてきた。
気付けば、いい歳して、いつも1人。
そのことに、30歳手前になってふと、気付いて、さすがに動き出そうと思って無料のマッチングアプリに登録した。

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ゴールデンウィークは、東京に帰省して、ひたすらマッチングした人と会うことになった。
朝、昼、晩……ほぼ毎日、男性の誰かと話したり食事したりした。
20人ほど会って、そのうち唯一、1人だけ、自分から誘った人がいた。プロフィールも写真も、とても真面目そうで笑顔が朗らかな温かい印象の人だった。
アプリで何回かチャットのやり取りをして、お互いしばらく連絡していなかったのだが、私が東京に帰省するタイミングで再度連絡をし、会うことになった。
正直、他の大勢は全員、向こうから私を誘ってきていたので、チャットの向こうの気になる彼を自ら誘って会うのも、どこか新鮮だった。

緑が生い茂る晴天の日の、ゴールデンウィーク中日。
2人で東京のカフェを出る時、やはり、私は実際に会って良かったと素直に思った。
夕暮れのカフェで、お互いについて話し合った後、どこか私の心の中はポカポカして、また彼と話したいし会いたいという気持ちになっていた。

「次もお会いしたいです」

私は、もう真っ暗闇に包まれた帰りの電車の中で、彼のLINEにそう送っていた。

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それから3ヶ月。
遠距離の私たちは、季節がひとつ移り変わったお盆休みの最終日に3回目の食事をすることになった。やはり会うのは東京で、今回はお互いが好きな焼肉の個室のお店でゆっくり食事をした。
正直、1、2回目と変わらない、お互いの仕事の近況や、実家の話、週末の過ごし方の話などで会話がずっと続き、私たちのいつもどおりの食事の一時を過ごした。

すべてのコースの焼肉が提供されて、帰ろうとした時。
お会計に立ち上がる前の帰り際、彼が私の席の隣にやってきて、そっと手を重ねながら、横にいる私の目を優しくまっすぐな眼差しで見つめながら気持ちを伝えられた。

「今日3回目だから、ちゃんと気持ちを伝えとかないといけないと思って…僕は一緒にいて楽しい。本当に魅力的な女性だと思う。付き合うなら、年齢的にお互い結婚を前提にだと思っている。将来的には、自分は、子供も欲しいと思ってる。
でも、ひとつだけ。これ言ったら面倒臭い人間だと思うと思うし、傷つけることになるかもしれないけど……。〇〇さんは何も悪くないけど、体調面が心配。もう本当にそれだけ。
だから、申し訳ないけど、もう少しだけ時間が欲しい。もう29歳で待たせるわけにはいかないから、必ず答え出すから。とりあえず、近々また会おう。会えない時は、毎週電話もしよう」

そんな風に伝えられた。
それでも、私は内心すごく嬉しかった。
自分でもわかる。きっと、いままでにない満面の笑みで手を握り返していたと思う。

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「そういってくれるの、すごく嬉しい。私も結婚を考えているし、将来子供も欲しい。〇〇君がその点が気になってるのはしょうがないと思う。未来がどうなるかわからないけど、私は〇〇君の違う面をもっと見たいと思ってるし、私も一緒に過ごして楽しい。だから、電話も会うのも楽しみにしてる」

そんな風に告げ、焼肉店をでて、行きたい美術館に連れてってといい、2人で電車に乗って美術館に行った。
今まで一度もいったことがないという美術館を、彼が楽しんでいたかどうかは正直わからない。
でも、3回も会った私たちは、間違いなく惹かれあい、別れ際は後ろ髪をひかれ、どうなるかわからないお互いの未来を忘れて、2人で優しく一瞬ハグをして、東京を去った。