皆の先頭に立って率いることだけがリーダーでは無い。私はサークルで副部長を経験してなお、そう思う。リーダーシップを発揮して先導を切って突き進んでいく姿は惚れ惚れするし憧れる。でもリーダーがそうするためには、影のリーダーも必要だとひしひしと感じた。

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「幹部になってほしい」

大学2年生の夏、先輩に言われた。このサークルの次期幹部候補は2人しかいないよ、と。幹部は部長と副部長のことで、要するに部の運営する役割の人にあたる。私の所属していたサークルは理系の中の超理系のサークルで男の子ばかりの分野だった。大学生を見ても、教授を見ても、この業界の凄い人を見ても、男、男、男。どこにも女性は見当たらなかった。先輩に幹部になって欲しいと言われたけれど、男ばかりなこの世界に気後れしていた私は、部の顔である部長だけは嫌だった。そうして私は副部長となった。

私の代の部長は率いることも、部をまとめることも得意じゃなかった。それにあまり興味も無かったのだろう。結局はサークルの本来の活動ばかりをしていた。それでもこの世界には、この方法が正しかった。「部長が頑張ってるから」と部員もよく活動してくれた。それでもまとまらないことにはまとまらないのだ。進むこともしない。だから私は後ろから押していく方法を取ることにした。

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サークルの一番の問題は幹部とそれ以外の人たちの熱量の差だった。幹部は毎日のように部活に来る、それ以外の人はまちまちだ。だからまずは来やすい環境作りとコミュニケーションを取ることにした。

部員には「課題持ってきてもいいし、お昼ご飯もここで食べていいよ」と部室を自分の居場所として安心してもらえるようにすることから始めた。来てくれればコミュニケーションが取れる。「今忙しいの?最近何してるの?」それだけで十分だった。

部活動困ったことやそれ以外でも、相談が来るようになった。相談がもらえれば次に幹部がをするべきかが見えてくる。そうして少しずつ部の課題をクリアしていくようにした。

また年イベントの告知が遅かったりするのも、アルバイト等忙しい人には「このあたりに活動する予定あるから来てね」と促しておくことで、アルバイトが入って行けなかったとなることも減ったように感じた。部員一人一人に話に行くのは時間がかかるし、体力もいる。それでも話の内容を覚えておいて「そういえばさ……」と話せば信頼関係も築けてくる。そんな小さな積み重ねを毎日していた。

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もちろん私の力だけでは到底無理ではあったが、幹部も部全体としてもみんなよく頑張った。私が幹部だった年の一大イベントは参加者が過去最大人数となった。私は仲良しの先輩と一緒に毎年頑張ってきた同級生と、そして信頼を寄せてくれるたくさんの後輩たちに恵まれた。たくさんの人に囲まれた年だった。

私がやってきたことは本当に些細な「え、そんなこと?」と思われてしまうようなことばかりだ。ただ毎日話しかけに行く。たったそれだけ。そこに意味あるのかと笑われてしまうのかもしれない。でも私は人と信頼関係を作る上で、チームのまとまりを作る上で、最低限のコミュニケーションは必要だと思ったのだ。誰もそれをしなければ辛いことや大変なことがあっても誰にも相談できず、そのまま消えるように辞めてしまうかもしれない。そんなの辞める側も辞められる側も切ないし苦しい。相談できれば、頼り頼られる関係を同級生とも先輩とも、後輩たちとも作れる。副部長という立場だからこそ、後ろから支えて押していく手段として、私はコミュニケーションを選んだのだ。

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人は一人ではやっていけない。得意も不得意もある凸凹たちだから、頼り頼られる関係で共に生きているのだと思う。それに私は先輩からの「ありがとう」ほど嬉しいことないと思っている。尊敬する、憧れの人からの「ありがとう」は飛び上がるほど嬉しいし、自信になるのだ。人は自信に満ち溢れてきらきら輝いているときが一番楽しくて、楽しそうなんだ。日本人は謙虚すぎるとか言うけれど、私もそう思う。みんなもっと頼り頼られる関係でたくさんの「ありがとう」を言い合って、自信に満ち溢れながら生きることができたらなと、私は思う。