残念ながら、今は交流が途絶えてしまったけれど、「あの子」と過ごした記憶は今でも色濃く残っている。彼女との出会いは大学時代。入学してすぐ、同じクラスになった。

入学して間がないというのに、彼女はすでに数人のクラスメイトに囲まれていた。そして、その子たちのことを早くも「友達」と呼んでいた。私はそんな彼女と仲良くなった。

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彼女はおしゃべり。いつも夢中になって話しているのが印象的だった。その性格ゆえに彼女の交友関係は広かった。どこでどのようにして友達になったのか、いつも不思議に感じていた。

彼女は、私がサークルで知り合った友達とさえ、私の知らぬ間に仲良くなっていて、驚いたこともある。私はあまり多く話すタイプではなく、交友関係も狭い。そんな私とは、まるで対照的な彼女が羨ましい限りだった。

そんな彼女と、大学が主催する留学生との交流イベントに何度か参加した。私は大学で英語系の学科を専攻していたので、留学生との交流には大いに興味があった。日本人以外の人と交流できる絶好の機会。軽食を取り囲んで、何人かの留学生と会話した。しかし、イベントに参加したものの、いざ何を話したら良いかわからない。それに、英語が思うように出て来ない。彼女も特別、英語がペラペラという訳ではなかった。

しかし、留学生との交流を楽しもうという気持ちは確実に彼女に負けていた。たとえ、言語が通じなくても、ジェスチャーなり、簡単な英語で話してみたり、その気になれば、いくらでも方法はある。私は、なんとなく雰囲気だけで交流を楽しんだつもりになっていた。

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ほぼ毎回、イベントの終わり、私と彼女は留学生たちと連絡先を交換した。それが嬉しくて、よく、その日の晩に「ありがとう」のメッセージを留学生たちに送っていた。しかし、やり取りはさほど続かなかった。ある時、彼女が留学生と休日に遊びに行く約束をしたけれど、一緒に行かない?と誘ってきたことがあった。

私は、いつの間に留学生とそんなに仲良くなったのだろうと思い、謎の焦りを感じた。私は遊びに誘われたことは嬉しかったけれど、どこか彼女に負けている感じがして、なんだか劣等感を抱いた。それに授業の課題をたくさん抱えていたので断ることにした。

しかし、羨ましい限りだった。留学生と一緒に出かけるなんて、そう身近にできることではない。せっかくの良い機会だったのに。また、別日で自分から留学生に遊びの誘いをしたら良いだけのことだけれど、誘う気にはなれなかった。

遊びに誘えるほど留学生と仲良くなれているとは到底思えなかったからだ。何だろう。私は一体何をしたいのだろう。留学生と交流したくてイベントに参加したのに、いまいち交流が進んでいない。同じようにイベントに参加していて、彼女との差を大いに感じていた。

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学生の頃は、留学生に関わらず、誰かと交流することこそ楽しいものだと思っていた。サークルに入ることが大学生としてのあるべき姿のように捉えて、なんとなくサークルに所属していたようにも思う。しかし、私は本当に誰かと盛んに交流したかったのだろうか。

もちろん、ずっと一人は嫌だけれど、私は一人の時間がこのうえなく好き。そして、一人で行動することに、さほど抵抗がない。一人で美術館に行ったり、ショッピングに行ったり。なんなら、片道4時間かけて一人で東京ディズニーランドにだって行ってしまうほどの行動力をも持ち合わせている。

私は人と交流することに対してあまり積極的でない自分を今でも受け入れきれていない。本当は誰かともっと盛んにコミュニケーションを取りたいのだろうか。でも、やっぱり一人が好き。今でもそんなモヤモヤを抱えている。私の考えはわがままかもしれないし、人間関係に対してどこか甘えがあるのかもしれない。

しかし、誰しも、人と一緒にいたい時もあれば、一人で過ごしたい時もあるだろう。人間関係というのは、意識的に操作するものではないと思っている。残念ながら、彼女との交流は途絶えてしまったけれど、今、私の周りにいてくれている人たちとの関係を大事にしたい。この想いは変わらない。