高校1年生の9月、人生で初めて彼氏ができた。
部活内恋愛が禁止だったにもかかわらず彼からの「ルール破ってみるのどうですか?」という提案に負けて禁断の愛がスタートした。
とってもとっても大好きだったけど状況はわずか半年で変化する。
◎ ◎
4月、学年が上がり部活の勧誘が始まる。
演劇部だった私は体験で来てくれた1年生の女の子が可愛くて演技がうまくてぜひ入部してほしいと誘った。
めでたく入部してくれて、誰よりもかわいがっていた。
しばらくたったある日、
「先輩って〇〇先輩と付き合っていますか?」
その子から聞かれて、「いや、付き合っていないよ」と言った。
ルール上、そう言うしかなかった。
次の日から後輩ちゃんは私の彼氏にべったりするようになった。
まあ別に懐く分にはいいのだが、部活の邪魔になるほどだったから後輩ちゃんと彼氏に少し静かにしよう、そう注意した。
◎ ◎
それから気が付いたら部内で孤立していた。
同級生、後輩のほとんどが私を無視したり何かこそこそ話している。
真偽はいまだにわからないが、そのまま彼氏の様子も激変し私にクソ女、そんな子だとは思っていなかったと吐き捨てた。
何があったと聞いても誰も教えてくれない。
他の後輩に聞いても、あの子から電話が来るから話しかけないでくださいとおびえたように言われた。
それから元彼と後輩ちゃんは付き合いだしたらしい。
でも私もしばらくして別の彼氏ができた。
すると今度はその彼の方と仲良くしだした。
その後も顧問から、あの後輩にとられるから好きな人はちゃんと隠しとけよと言われるほど後輩ちゃんは私の好きな人にちょっかいを出していた。
顧問に言われるくらいだから相当だったんだろう。
何人も後輩ちゃんになびかれてショックを受ける中、1人だけブレずに仲良くしてくれる1人の先輩がいた。
◎ ◎
ある日、その先輩から誘いがあった。
「期間限定でお化け屋敷ができるから一緒に行こう!」
ホラー大好きだった私は二つ返事でオーケーした。
恋愛としての好意はなかったものの、やはり高校生だ。
男の人と2人で出かけるという事態に少し緊張していた。
ましてや先輩だ。
受付で1人1000円ずつ出して、入場口へと案内される。
そこにいるお姉さんから説明事項を告げられる。
危ないから走らないこと、展示物には触らないこと。
どこにでもあるありきたりな注意事項だ。
一通り説明を終えたお姉さんは言った。
「では、はぐれないようにこのロープの両端を持っていただくか、手をつないでいただいていいですか?」
お姉さんの持つロープに手を伸ばした時、それと反対側の私の手を先輩の手がつかんだ。
「じゃあいってきまーす!」
お姉さんにさわやかな笑顔を向けて先輩が歩き出す。
お化け屋敷の中で何か先輩がたくさん話しかけてきたし、ピエロみたいなやつがチェンソー持って追いかけてきたような気がするけど、気が付いたら先輩とわかれて帰る電車に乗っていた。
心臓は家に帰ってもずっとバクバクしていた。
◎ ◎
その先輩とは特にその後何もなかった。そのくらい天然な先輩だったのだ。
そのまま先輩は卒業していって私も卒業して、2年後の20歳の誕生日に一緒にドライブに行った。肩が外れそうになるぐらいボウリングもした。
今でも本当にたまーに連絡を取り合うぐらいの関係だ。
現在私は25歳になる訳だが、現在までこの先輩のキュンは私の中で不動の1位である。
一瞬だけ映画の主人公のような気分になれて、落ち込んでいた心も一瞬で晴れた。
この先輩には今でも感謝してもしきれない。