あ。この子とは一生仲良くなれない気がする。
高校に入学したばかりの頃。出席番号で決められた席順で、彼女とは席が隣になった。お互いの第一印象は最悪だった。理由は分からないけれど、なんとなく直感で感じとっていたんだと思う。

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お互い無意識のうちに敵意を抱いていた。それなのに私たちは同じ部活に入部した。そんな偶然に不安しかなかったが、気がついたらクラスでも部活でもいつも一緒にいた。彼女は明るくて才能があって、お転婆かつお茶目で。彼女は自然と周囲の人を惹きつける性質だった。私はそれに、嫉妬していたのだと思う。彼女に負けたくないという思いが当時の私の原動力だった。勉強も部活も全力で取り組んで、チャンスは自らつかみに行った。人付き合いも頑張っていた、と思う。彼女にはあって自分にはなかったもの。勇気さえあれば手に入ると思って努力を積み重ねた。その結果私は、大勢の人の前で話すという苦手を克服することができたし、部活や課題研究で成果を残すこともできた。私たちは仲の良い友人であり、切磋琢磨し合ったライバルでもあった。自分の未熟さのゆえに彼女を傷つけてしまうこともあったけれど、高になってクラスが離れても卒業するまではお互いの教室をよく行き来していた。

今年八月。私は一年間の留学を終え、高校のクラスメートを通して彼女と会うことになった。久しぶりに会った彼女は、相変わらずで。出会ったときと変わらない、屈託のない笑顔。そんな彼女は内定が決まったという。来年から県外の会社で働くことになったらしい。一方の私はというと、卒業を一年延期することにしたから、今は実質三年生。大学院に行くかどうかすらまだ決めていない。

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高校を卒業してすぐの頃はもっと頻繫に会っていた気もするが、今は連絡することすら億劫で。同じ大学に進んでも、講義棟が違うためキャンパス内で会うこともなくなったという物理的要因もある。もう一つは、何気ない会話の節々で感じるごくわずかな違和感。彼女と対面して話しているときは楽しい。くだらない話で笑っては、高校時代の思い出話に花を咲かせることもある。でも、確かに私たちは違う道を歩みはじめ、各々大切なものができて、考え方も価値観も変わった。会話をしていても、なんだか話が嚙み合わないような気がするのだ。気持ちが離れていくとはこのことなんだろうか、と思う。

無数の出会いと別れがある中で、同じ人と長くつきあっていけることは奇跡だと思う。人と合わなくなったと感じ始めたら良い兆しだと聞いた。今はまだ寂しいけれど、こういうことを繰り返して歳を重ねていけば、いつかは仕方がないと割り切れるようになるだろうか。とりあえず、私の周りの人が変わるのは私が成長しているからだと考えることにしようと思う。

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これから先、いつかどこかで彼女に会うことになるかもしれないけれど、会わないかもしれない。あの日私は、彼女の卒業後のことを聞けただけで十分だと思ってしまった。彼女に対して何も感じなくなってしまっていた。羨望も嫉妬も執着さえも、私の中からは今はもう、何も生まれない。ただ、彼女は高校三年間、私の親友でありライバルであり憧れでいてくれたことには本当に感謝している。彼女と出会えたから今の私があると言っても過言ではないと思う。それくらい私の人生に大きく関わってくれた人。高校時代、自分勝手でわがままな私と仲良くしてくれてありがとうね。来年から社会人頑張ってね。そんな思いを心の中で呟き、私は彼女と駅でさよならした。