東北6県の中で一番栄えているのは宮城県仙台市だと思う。私自身が全ての県に足を運んだわけではないものの、東北にルーツを持つ血筋のため両親からそう聞いたことがあるし、テレビでも聞いたことがある。仙台駅の東口を出ると大きなファッションビルが立ち並んでいて、長いペデストリアンデッキが枝みたいに伸びている。いつ行っても人の往来が多い。

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仙台駅から電車で10分ほどのマンションに、祖父母が住んでいる。近くにはおじ一家も住んでいて、中学校の時に学校に行かない代わりに祖父母やおじの家にお世話になっていたことがあった。滞在するのは大体2週間くらいの期間で、季節は冬と春が多かったように記憶している。関東の地元から、高速バスで行っていた。

よく、祖父が「街へ行ってきなさい」と言ってチャージされたicscaを渡してくれた。icscaというのはスズメのイラストが描かれた、Suicaに匹敵する仙台エリアの交通系ICカードのことだ。

中学生の頃は勉強そっちのけで青文字系雑誌を読み込み、古着にハマっていたのでネットで検索し、仙台駅周辺の古着屋をディグった。その中でも当時一番お気に入りだったのが、駅からは少し歩く距離のパナマボーイというお店だった。

店員さんは個性的なメイクとファッションで、店内の棚にはアメリカで買い付けてきたというキャラクターTシャツが所狭しと積み上げられており、お店オリジナルのパッチワークスカートやバッグなどもあってポップでレトロな世界観だった。

ある時祖父母と一緒にお店に足を運んだ際、面白いプリントのTシャツがあった。
Tシャツはターコイズブルーのような澄んだ原色で、お腹の辺りに食パンとロールパンがセックスをしており、入れられているロールパン側がなんとも苦しそうかつ淫靡な表情を浮かべているプリントが施されているのである。確かOH!とかYES!みたいな英語も書かれていたような気がする。

祖父はそのプリントの意味を知ってか知らずか、当時中学生の私に「可愛いしこれがいいね」と言って提案してきた。それを見た時、思春期真っ只中の自意識過剰ガールは軽く額に汗をかいて赤面したのだが、何を思ったかそのまま購入に至ったのである。祖父も祖父だが、私も私だ。イエスマンにもほどがある。そして、その場で見ていた祖母も祖母である。
しばらくそのパンパンTシャツは数年間は自分の部屋のクローゼットにあったが、一度も着用しないままメルカリに売りに出され、今は誰の手元にあるのか分からない。

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そのことを最近ふと思い出してまた足を運ぼうと検索すると、残念ながらパナマボーイは2年前に閉店してしまったようだった。でも、20代の今でも楽しめるような洋服店は数えきれないほどたくさんある。

また、仙台といえば銘菓萩の月である。一度はお土産でもらって食べたことがあるという方も多いかもしれない。私は萩の月を冷凍して、カチカチのままアイスのようにして食べるという、元の良さを打ち消してしまうようなちょっとナンセンスな食べ方をするのが好きだ。

ビルの間にも緑が多く自然豊かで空気が良く、牛タンやずんだなど美味しいグルメもたくさんあり、ときめくお洋服にも出会える街仙台。地方移住の場としても、程よく都会で色々なものが揃っているので初めての人にも向いているのではないかと感じる。

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これを書いている今現在は、明日半年ぶりに祖父母の家に行き彼氏を紹介するという大イベントが控えているためドキドキが止まらない。OH!