”あの子”と言って思いつく存在は何人かいる。これを読んでくれているあなたにも、”あの子”は存在していることだろう。人は一人では生きてはいけない。そう知っていたはずなのに、わかっていたはずなのに、そんなことすら諦めていた時に出会った”あの子”の話。

◎          ◎

あの子と出会ったのは、入学式の直前だった。

この出会いがわたしの人生を支えてくれていると言っても過言ではない。わたしは大変な落ちこぼれだったので、周囲と足並みの揃わないスタートであった。でも、だからこそ、あの子と出会うことができた。

落ちこぼれの自分をこんなに褒めたことはなかった。出遅れたから、あの子に出会えたのだ。間違いなく人生で1番楽しかったと何度も思い出すような時間を過ごすことができたと思っている。これを僥倖と呼ばずしてなんと表現するのだろう。

◎          ◎

わたしは入学するにあたって、「友達なんかいらない」と、そう本気で思っていた。それまでの生活が、本当に散々だったのだ。単に、わたしの立ち回りがちょっと下手すぎた、というだけではあるのだが。

あの子がわたしに抱いた第一印象は、「絶対に仲良くなれない」だったという。この話は本人から聞いたことなのだが、その感覚はたぶん正しい。わたしたちは、人間社会で他者と共存しなければ生きていけない。それにも関わらず、「友達"なんか"いらない」などと本気で思っている人と仲良くしたい人はいないだろう。

そう思っていたはずなのに、わたしはあの子と所属が同じというだけで勝手にひょこひょこと付いて行っては、何もかもをあの子に頼りっきりにしていた。驚くほど矛盾している。

でもあの子は、そんなわたしを受け入れてくれた。ひとつも説明を聞かないわたしに、何を聞かれてもきちんと答えてくれたのだ。わたしだけじゃなくて、周りのみんなの心配までしていた。ちょっと優しすぎると思う。

◎          ◎

そんな、頼りになるお姉さん以上にお母さんみたいな一面があるあの子だったが、それと同じだけ全く頼りにならないこともザラだった。でも、最後にはしっかりやり遂げている、ちゃっかりさんでもあった。

そんなあの子との生活は本当に愛おしいものだった。文字通り、学生生活で一番一緒にいたのはあの子だった。あの子は、勉強以外にもたくさん話を聞いてくれた。二人して号泣しながら語り明かしたことは、わたしもずっと覚えている。あの時、わたしは心からあの子に救われたのだ。

そして、そんな生活が何年かあって、わたしたちは卒業した。あの子がいなければ、わたしは卒業できていなかった。あの子がいなければ、どこで諦めていたかわからない。あの子がずっと隣にいてくれたから、諦めないでいられたし、頑張ろうと思えた。やっと取得したこの資格も、あの子がいなければ取れていなかっただろう。

◎          ◎

卒業してからも、たまに連絡を取ったり、会ったり、飲んだりするのだが、それがたまらなく幸せだと思う。友達なんかいらないと思っていたあの時のわたしは本当に大馬鹿者である。大人になってから、こんなに大切にしたいと思える親友ができるなんて、あの時のわたしに言ってもきっと信じないだろう。

「誰よりも」そんなことばをもらえるなんて、思ってもみなかった。
「親友」そんな風に言ってくれて、本当に嬉しかった。
あのたった数行のメッセージカードに涙が止まらなかったのに。これを書く今も涙が止まらない。

結婚式、本当に綺麗でした。招待してくれてありがとう。

学生時代を一緒に駆け抜けてくれてありがとう。
親友でいてくれてありがとう。出会ってくれてありがとう。
どうかいつまでも幸せでいてください。愛を込めて。