アラサーが近づいてくると、周りの友達がほとんど結婚してしまった。
長期休みごとに誰かしらの結婚の報告を聞く。  
夏休みに地元の友達に会った。そろそろ結婚の話を聞くかと覚悟していたが、まだ独身だった。
その友達には彼氏はいる。しかしまだ婚約はしていない。
友達が言うには、今実家暮らしで、家から職場が近く、家族とも仲良く暮らしている。趣味や自己投資に好きなだけお金も使えている。世間体で結婚をしなければならない気持ちになっていると言っていた。

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その友達は激務で、長期休みの度によく愚痴を聞いていた。

最近社内の育児休暇制度が整い、多くの社員が利用するようになった。 しかし制度だけを整えたような形で、実際の実務は常にどこかしら人員不足に陥っている。

男性が多い職場であるので、長くても半年で戻ってくることにはなっているが、お互い様といった感じで人員が増やされることはなく、社員同士でカバーをしている状況だそうだ。

育休制度が男性にも普及しているのはいいことだが、職場のみんなが制度を使いたいがために、独身の者たちがたくさん働かなければならず、残業時間が増えて、 結果的に給料が増えるが、常に忙しくてしんどいとこぼしていた。
もちろん育休はハッピーな理由であるし、前々からいつからいつまで休むということが分かっていることなので、心の準備はできる。しかし、誰かにしわ寄せが行くということや、お金には代えられない大変さがあるということを会社には知ってほしいと言っていた。
おかげでいつも疲れているし、結婚について考える暇もないんだけど、と付け加えていた。

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私も育児休暇を取る同僚のサポートに入ったことがあるが、確かに友達の言う通り自分の通常の業務もやりつつ新しいことも覚えなければならない負担は大きかった。
完全に担当が変わったわけではなく、同僚が育休から戻ってきた後には仕事を前進させて、返さなければならない。かと言って自分の仕事もおろそかにできない。
振り返ってみると慣れない業務に新しい人間関係も増え、かなりストレスフルな毎日だった。

私はその人の業務すべてを受け持ったわけではなく、チームの他の人と分担して行ったため、 チームの中で余裕のない人が他にもいた。結果的に上司たちも慌ただしくなり、数ヶ月間はチーム全体がてんやわんやな毎日になってしまった。
育休を取る直前まで、同僚は何度も謝っていた。

私は今独身で、子供を産むかわからない状況だ。正直、お互い様にはならないかもしれない。しかし、大変な時期に長期の休みを取ってくれる同僚は、子供や家族にとっては最高の親である。それに私も育児休暇以外の理由で迷惑をかけるかもしれない。
私は、同僚の担当範囲を代わりに担当できるこの機会に新しいスキルを習得しようと思って、気持ちを切り替えた。

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チームに余力がある状態だと、一時的に人員が減ったときでも業務を回していけると思うのだが、常に人員不足が故に一人ひとりが激務になってしまうのは、友達の会社も私の会社も同じなんだなと実感した。
人員に余裕がある会社は存在するのだろうか。