私が生きてきた20年間の中で眠れない夜は数えきれないほどあった。その中でも記憶に強く残っているのは愛している人から別れを切り出されたとき。

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基本的に自分から人を本気で好きにならない私は、19歳になろうとしていた初夏に一人の男性に恋をした。バイト先が同じで、私よりも年が上の人。すべてがかっこよく見えたし、尊敬していた。私が悩んでいることを相談しても的確に答えてくれ、時には厳しく指導してくれていた。私にはない考えを持っていて、どんどんその人を好きになった。お互いに思うことがあれば話をしていた。そのくらい気を遣わずに私を出せる人だった。私たちの間には、生きてきた年数も違うし、大きな差があったように思う。だから彼は常に私に成長を求めていた。同じ目線で物事が語れるくらいには。そんな彼と出会ってから約1年後、私が何も成長できていないということを理由に別れを切り出された。

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もともと、うだうだとたくさんのことを考えてしまう私は、私の何が間違っていたのか、変われていないのかを考えていた。何も思いつかない。私は必死に変わろうと頑張ったのに何も伝わっていないとしか思えない。別れを切り出されたときに言われたことを思い出して考えるも、私の人生すべてを否定されたように感じた。涙は止まらないし、考えても何もまとまらない。わかるのは変われていない自分がいるということだけ。いつもなら考えている間に眠れるのに、眠れない。いっそのこと寝て忘れたかった。それすらもできない。こんなに夜が長く感じたのは初めてだし、嫌いになったのも初めてであった。何もわからないまま、朝になる。朝が来ても動く気力はない。

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そんな夜が一週間は続いたと思う。また彼と前のように話すには、私が変わるしかないことはわかった。泣いている暇はない。私は大きく変わるしかない。そのために私は内面から、考え方から変わる必要があると感じた。大好きで尊敬しているが、私を捨てた男にいつまでもしがみついている暇はない。必要もない。たくさんのことに触れ、私の価値観、考えを広げていこう。そうやって私は成長できればいい。私のするべきことが見えてきたのかもしれない。
眠れない夜は私からしたらまだ明けていない。別れを切り出されたあの時から変わらない。いまだに苦しくなる時もある。しかし、進む方向性を決められた私の夜明けは近いのではないか。気持ちよく朝を迎えられる日はもうすぐなのではないか。そんな朝を楽しみに、明けない長い長い夜と戦う。

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眠れない長い夜でも、この世界は私の気持ちなんてお構いなしに夜が明けて、朝になってしまう。動かなければいけなくなる。それと同じように、どんなに苦しい日だったとしても行動しなければならない。そんなことをしているうちに、いつかは前向きに動けるようになっている。考えすぎて眠れない日が何日続いたとしたって、少しずつ前に進んでいる。朝が近づいている。そう考えたら、私のこの長くて苦しい夜は、私にたくさんのことを気づかせるきっかけになっている。それだけで私は少しずつ成長しているという証明になるではないか。私の朝はもうすぐかもしれない。
眠れない夜に苦しんだが、そんな夜があってもよかったと思えるくらいには前向きになれた。毎日が眠れる夜でなくていい。眠れない夜に振り回されることがあってもいい。すべてが私を成長させてくれる鍵となっている。眠れない夜に悩む人は多いと思う。いやでも夜は明けてしまうし。でも、ちょーっとずつ前に向かっている、自分が変われていることに気づいてくれる人が増え、眠れない夜に悩む人が減ればいいと思う。