2ヶ月近く、平均睡眠時間が2時間という日々を過ごしたことがある。
正直あまり思い出したくない地獄のような2ヶ月だった。

数年前、私は幼稚園教諭として働いていて、ちょうど今の時期は運動会が終わって生活発表会の準備を始めていた頃だった。5歳児を担任していた私は、子どもたちと一緒に発表する劇の内容決めをしたり、台本や衣装づくりをしたり、毎日バタバタと忙しく働いていた。

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そんな中、地獄が訪れた。
劇で使用する子どもたちの衣装を仕立て、園の先生方に見せると大きな声で笑われ、信じられないという顔をされた。「これで保護者が喜ぶと思うの?」「先生のクラスの子どもたちが惨め」など、気が済むまで笑いものにされ、明日までに修正するよう要求されたのだ。

ここから睡眠時間を削って衣装づくりをする日々が始まった。
担任していた子どもたちは25名。同じ役でも男の子はズボンで女の子はスカートにするよう先輩方にきつく言われていたため、自分の意思に反して作る衣装の数も増えていった。

夜中はどうしても眠くなるためBGM代わりにテレビをつけていたが、深夜2時を過ぎると放送する番組がなくなり静かになった。しかし、私は気にせず必死に手を動かした。3時を過ぎると新聞配達のバイクの音が聞こえてきた。それでも私は気にせず必死に手を動かした。4時を過ぎるとテレビショッピングや朝の情報番組が始まった。情報番組のキャスターが「これからお休みになる方はおやすみなさい」と言う。そこで私はようやく作業を止め、1、2時間だけ目を閉じることができた。

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衣装直しは生活発表会の前日まで続いた。先輩方のOKが出なかったからだ。当日も私のクラスが衣装に着替えてステージ裏で準備していると鼻で笑っていたので、最後まで認めてはもらえなかったのだろう。

この経験で気づいたことが2つある。
まず1つ目は、夜中に作業をしてもとびきり素晴らしいアイデアは生まれないということだ。睡眠不足が続くと、夜更かしをすることには耐性がついてくるが、体力を持続させるためになるべく頭を使わないようにしていた気がする。そのため、「このくらいでいいだろう」と妥協してしまう。当時は最善を尽くしていたつもりだったが、今思うと子どもたちに申し訳なかったと後悔している。

2つ目は、睡眠不足が続くと感情がなくなるということだ。先に述べたように、睡眠不足が続くと頭を使わなくなる。すると感情を出さなくなり、その状態が続くと自分が今どんな気持ちなのか全く分からなくなるのだ。私は感情がなくなった結果、職場から帰る途中で踏切に飛び込もうとしたことがある。辛いという感情は働いていなかったが、「今ここに飛び込めば楽になれる」と瞬間的に悟ったのだ。とても怖い経験だった。ふと我に返った瞬間、自分の感情さえ分からなくなってしまった自分が怖くて涙が止まらなくなった。

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この経験から、私は休職期間を経て退職した。休職期間は自分の心を休めるために使うよう担当医に言われていたが、夜になると目が冴てしまい、「仕事を休んで人に迷惑をかけて、きっと職場で悪口を言われているんだろう」と思い、全く気が休まらなかった。

退職して1年以上経った今では満足に眠ることができるようになったが、実は今でも眠れない夜は当時の記憶がフラッシュバックしてますます眠れなくなることがある。
私はそんな過去の私のように辛い経験をする人が1人でも減ってほしいと願っている。そのため、人間関係で悩んでいる人の話を聞き、「過去の私はこんなことがあったよ、あなたはそうならないでね」と伝えるようにしている。

世の中に、恐怖や不安で眠れない夜を過ごす人がいなくなる未来を願って。