どんな男性が好きかと問われて、即答できた試しがない。私は私の好みのタイプがわからない、というのは耳にタコができそうなほどここのエッセイで書いている(この場合は目にタコができるのだろうか)。
過去に好きになった芸能人、いわゆる推しと呼べる存在も何人か存在するが、全員さして共通点がない。

強いて言えば、全員1980年生まれだった。たまたま。2001年生まれの私からすれば22歳年上の、言葉を選ばなければ総じておじさんである。とはいえ私はおじ専ではない、…と思いたい。できれば付き合うのは同年代がいい。

◎          ◎

先日、女2人でディズニーシーに行ってきた。ディズニーにはこれみよがしにカップルがうろついているのだが、よくよく観察してみるとこれがなかなか面白い。

まず、彼女の腰を引き寄せようとして手を回したものの「暑い!」と拒まれている彼氏がいた。9月上旬なので彼女の気持ちも痛いほどわかるが、さすがに彼氏に同情した。南無三。
待ち列に並んでいると、カップルの「もう話す内容が尽きてしまったあとに見られる惰性的会話」もしばし見受けられた。

人の会話を盗み聞くのは悪趣味だとわかっているが、こちらも長い待ち時間に退屈しているので他人の話す内容くらい聞きたくなる。そうして耳に入ってくるのは「友だちとディズニーに行ったときの振り返り」とか「グッズの価率」の話などである。彼女はそういう話聞きたくないんじゃないかなぁ、とは思いつつ、彼氏も彼氏でもうネタが枯れきっているのがわかるので責められない。

あまり面白くない会話を勝手に楽しんでいる私が一番性格が悪い。

◎          ◎

そうして様々なカップルを横目に見ていたが、一際輝いていたのが、タワーオブテラーに同乗したカップルだ。「そんな怖くないよ」と励ます彼女の横で「まじで?言ったからね?」と弱気な彼氏。良い、とても良い。
そうしてエレベーターに乗り、キャストに見送られると浮遊感が襲う。途中階でシリキウトゥンドゥに促されて自分に別れを告げると、エレベーターは一気に最上階へと駆け上り、そこでシャッターチャンス。

先ほどのカップルだろうか、男性がずっと「無理かも、あー無理かも」と喚いている。浮遊すると「あああああ」と低く大きな叫び声が聞こえ、急落下と共にワンオクターブ上がった男性の叫び声が響いた。
無事に帰還するや否や、シートベルトを外した彼女が彼氏のぐちゃぐちゃに乱れた髪を直してあげて「楽しかったでしょ?」とニンマリ鬼畜な一言。

うーん、良い、めちゃくちゃ良い。赤の他人のお2人にきゅんきゅんを頂戴してしまった。

◎          ◎

私は私の好みのタイプがわからないけれど、付き合うならこういう彼氏がいいと思う。

変にカッコつけず、怖いものは怖いと素直に言って、待ち時間は惰性でするつまらない話よりも、古今東西やしりとりなんかがしたい。

ひっつかれるのは嫌いではないが、ひっつかなくても楽しめる間柄が一番心地いい。すましたりスカしたりする男性は私の好みではない。その点では、私の歴代の推しにも当てはまっているのかもしれない。

そんな私も直近で合コンに参加する予定がある。ディズニーを心の底から一緒に楽しめる男性をゲットしたい所存だ。