職場の二児の母の40代女性と独身の20代女性が会話をしている。40代女性が旦那さんの愚痴をこぼしていたようだった。

ひととおり聞いたうえで「なんで結婚したんですかぁ~?」と20代女性。
「なんで結婚したんですかぁ~?」と口調は同じく40代女性から少し遠くにいた私に飛び火してきた。

“そんなに不満があるのに結婚を続けるメリットってあるんですか?”という意味合いを含んでいるように聞こえた。ううむ、これは何か答えねばならない。

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「う~ん。収入が単純計算2倍になるし味方ができる…って感じですかねぇ…」と、結局ありきたりになってしまい歯切れが悪い。ただ、あまりにも理由を列挙すると結婚を勧めるように聞こえかねないと思いこれ以上言うのをやめた。

すると、「そう言えばむちむちさんから結婚生活の話って聞いたことないかも」と二人。

そう、そうなんです!と逸る心を悟られないようにしながらゆっくりと口を開いた。
「愚痴とか悪口はできるだけ言わないようにしてるんです。思ってても仕方ないので直接相手に言うか、そうでないなら思わないようにしてます」
まぁ多少思うところはあるにはあるんですけどねぇと付け足すとへぇ~と二人。しまった、説教くさくなってしまっていると思ってさらに付け足す。

「かと言って幸せアピールというか、肯定的なこと言うと自慢と捉えられたり妬まれたりするじゃないですか。だから結局結婚について話すことがないだけなんですけどねぇ」
とお茶を濁してその場は終わった。

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この構図なんだよなぁ。既婚・子持ち側が日々の愚痴を言い、それを聞いた人々が結婚、出産・子育てを忌避する流れ。だって私も独身時代は後者の立場だったから。敬遠する気持ちはすごく分かるのだ。

つい結婚生活というと日々の不満や大変なことを話す文化がないだろうか。それが楽しいときもあるが、時々居づらく感じることがある。

「愚痴はあまり言いませんよ」の表明を少しできたかと思い、そこからはまぁ何言ってもいいかと考えるようになった。年齢もステージも随分と違うし、へぇ~で終わるだろう。

ある日40代女性から「子どもさんどうですか?」と聞いていただいたときに、「よく寝るしよく食べるし特に大きな悩みはなくて。育てやすい子ってこういうことなんかなぁと思ってます」と答えた。

「最近よちよち歩くようになってきてかわいい」、「パパ・ママと言うようになったがパパと言わない日は夫が落ち込む」などいくつか近況を話した。
「子の話は聞かれるまでしない」というのが子持ち側の配慮とSNS上で言われているのを目にし、普段言わないようにしていたが珍しく聞かれたため多めに話しすぎてしまった。 

すると少し遠くで聞いていた20代女性が、
「こうやって話を聞くと子どもってかわいいんだろうなぁって思うんですけどねぇ。ただ自分のキャパを考えると無理だなぁって思っちゃうんですけどねぇ」
とコメントした。

「分かる、分かるよ!私も出産するまではそう思っていたけどなんとかいけてるよ」と心の中で言ったが声には出さなかった。そう言ったら出産を勧めるようだし、そもそも“なんとかいけてる”ってなんやねん。結局無理してる感じが出とるやんけ。
けど出産・子育ては大変、無理という認識を持っている方々は多いんだろうなぁと肌で感じているし、それは経験者側からの話がほとんどであろう。

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「結婚は面倒くさいしメリットない」「妊娠・出産、子育てはいろいろと無理」という認識が広がれば非婚化、少子化は止まらないだろう。
いや、別に私も国の出生率を上げたくて出産したわけではない。頑張ったのに“1”としかカウントされないうえ、「今年の出生率は過去最低」とか言われたらなんだかもやもやしますよ。

けどそこじゃなくて、「我が子の同級生少ないのかぁ」とか「クラス対抗のイベントとかなくなるのかなぁ」とか、そんなふわふわしたことを考えている。

だからこの流れに抗うために、結婚、出産・子育てを経験した私としては、周囲の方々に明るい日々を話すことを細々と続けていきたい。
子持ち側の方々にも「明るいこと、話してもいいのかもしれないな」と気付いてほしい。草の根運動である。

10年後、結婚しない、子どもを持てないなどで後悔する身近な女の子たちの姿を見たくない。私は今日も大切な日々を噛みしめ、幸せを伝播させる準備をするのだ。