ネット上で執筆活動を始めた時、私は、「あぁ、ここでなら、まっさらな自分の言葉を話せるんだ」と思いました。その時、私は大学生でした。本来なら「自由」で「人生の夏休み」と呼ばれる時期を生きているのに、その頃の私は、どうも息苦しかったのです。何者でもない、ただの「私」の言葉を話したい、とずっと思っていました。

だから、SNSのプロフィールには最初、「書き物に勤しむ小鳥」と書きました。ペンネームが鳥の名前だから、そう書いているのだと思われたかもしれません。でも、女子大生とか、20代とか、22歳とか、そういう呼び名から離れたところで息がしたいと思うくらい、私は疲れきっていました。

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その理由は、大学を卒業した後、自分がどうなるか分からなくて、ずっと不安だったから。だからこそ、いずれ手放すことになる「学生」という肩書きを使うことも、この先「会社員」や「OL」という言葉で自分をくくることも、「ワーママ」や「○児の母」と名乗ることも、したくありませんでした。

これから自分がどうなるかは分からないけれど、いつまでも「私」でいたい。そんな思いから、プロフィールには自分の職業を書かないことにしたのです。

自分の年齢やライフステージを明かさずに発信活動をすることは、本来は邪道のような気がします。けれど、私の文章が未来の誰かに届いた時、「この人、OLだけどこういう活動をしているんだ」とか「児の母だから、こういうことを頑張れているんだ」などと思ってほしくありませんでした。ただ、「自分の頭で考えて、決めて、行動したんだ」とだけ思ってほしかったのです。

性別も、年齢も、職業も関係ない。「あなたは、あなたの頭で考えて、決めて、行動したらいい」ということが読者に伝わったらいいなと思ったのです。

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子どもの頃の私は、未来を不安がってばかりでした。テストの点数がいい未来に繋がっていることを信じて、ひたむきに頑張ってはいましたが、いつか「正しい道から外れるんじゃないか」「ちゃんとした大人になれないんじゃないか」と、頭のすみでは常に怯えていたのです。

この漠然とした不安は、私一人のものではないと思います。世の中には、何らかの肩書きを持っている人であふれていて、それが「何者かになりなさい」というメッセージとなって子どもたちに届いていることもあるのではないかと思います。

もちろん、夢を持つことは大切です。夢みた職業のために勉強したり資格をとったりするのも、人生において大事な過程です。

でも、その道から外れそうな自分はダメなんじゃないか、と委縮してほしくないのです。「何者か」になることが大切なのではないのです。○歳までに何かを成し遂げなくては遅いというわけでも、女性初の何かになることが偉いわけでも、女性でも社会進出をしていくのが正しいわけでも、子育てを頑張ることが女性のあるべき姿というわけでもありません。

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大切なのは、「自分の頭で考えて、決めて、行動すること」。誰かの後を追ったり、世間の流行の生き方に従ったり、あえて社会に変革を起こしたりしなくてもいいのです。それぞれの人が、ただの「私」として生き、考え、決めて行動をしていく。そんな「自由」な生き方が、未来に広がっているといいなと思います。

そのために私がとっている行動は、小さなものかもしれません。SNSのプロフィールで年齢や性別、職業を言わない。ただの「私」として、発信する。誰にでもできる、小さなことです。

でも、そんな小さな行動で少しでも社会の空気を変えられるなら、きっと意味がある。そう信じて、まっさらな「私」の言葉を今日も届けています。