「まるで平安貴族のような」というと言い過ぎかもしれないが、そう形容したいくらい上品で優雅な先輩がいる。
着物が似合い、食べ方や振る舞い、言葉遣いまでもが美しい。クリエイターなので節々にセンスもきらめく。
親が入っている宗教上のつながりの先輩だ。
数年前に関西地方から関東のこちらの拠点へ就職のために引っ越してきて、段々と話すようになり半年に一度くらいのペースでランチや飲みに行くようになった。

◎          ◎

4月頃にその先輩ともう1人の子と3人で自然派レストランに行った。わちゃわちゃと話して女子同士の楽しいひとときを過ごした。
レストランを出て、「次どうする?」という話になり、近くの駅ビルへ行くことに。私は先輩の車に乗せてもらって2人きりの空間になった。

「宗教にずっと反抗して生きてきたんですよね、私」と打ち明けてみると、
「そうなの?全然そんな風に見えないのに。私も実は色々思うことがあって、なんだかなと思うことばかりだよ」
と、他の信者には言えないような話が膨らんで互いにそうそう!のオンパレードだった。

◎          ◎

「盲信してる人達って、自分の頭で何も考えてないと思う」

なんて神に背くようなことを言って、私達はウフフと笑った。
そこから恋愛の話になってマッチングアプリで彼氏を作ったという共通点を発見する。

「結婚話に宗教って持ち込みます?」
と聞くと、
「そこは避けて通れないもんね。宗教を持った家じゃなければもっと生きやすかったんだろうなと思うこともある」
と言っていて、その通りだと思った。

「実は私、今の彼氏と行為後に付き合ったんですよね」
と打ち明けてみると、
「実は私もセフレがいた時代があって……」
と先輩もコソッと打ち明けてくれた。

思わず車内で驚きの声をあげてしまった。でもなんだか、俗世的な一面が知れて嬉しかった。

◎          ◎

それから半年が経ち、お誘いがあって9月にサシで飲みに行くことになった。電車で集合して駅近の居酒屋に行く予定だったものの、お店のトラブルがあり急遽ワインバーに入店することに。薄暗い空間とエモいカップルの雰囲気にやられそうになりながら、赤ワインとお洒落すぎる長い名前のメニューを頼んだ。

メインの話題はやはり宗教と恋愛である。先輩も彼氏とうまくいっているみたいで、嬉しかった。元カレの話もして、互いに過去の嫌な思い出を消化した。
ワインを2杯頼んだところでフラフラに酔ってしまったので、スタバにはしごして話を続けた。

スタバでは芸術の話をしたようにうっすらと記憶している。

「ゴッホって自分の耳を切って恋人に送りつけたんだっけ?」
とか、
「西洋と東洋だとどっちが好み?」
とかそういう内容だったと思う。先輩は造詣が深いので話していてとても楽しいし、憧れる。

◎          ◎

私達は周囲によく似ていると言われる。畏れ多い。
姿形が似ていたとしても、私は先輩のような高貴なオーラはないと思う。でも腹を割って話したら思っていることや感覚が似ていて、親近感を感じた。
これから先輩を見習って高貴さを身につけたい次第だ。