ありきたりかもしれないが、地元が好きだ。東北の田舎街で若者よりも高齢者が圧倒的に多い街。聞けば消滅するかもしれない街だとか。祭りになればたくさんの人がどこからか湧いて出てきて、子どもの声も聞こえている。その分、お年寄りの特有のなまりが入った井戸端会議も聞こえる。話している意味はよくわからないけど、笑っているのはいいことだと思う。平凡だけど平和な街。そんな街が好きだ。

そんな街で毎年見られる景色がある。この時期になると田んぼが黄金になる。今年は少し倒れているものもあったけれど、お米がこんな生産地でも不足していることを踏まえれば、出荷先よりも生産地の方が早く米不足は解決するだろう。

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私はこの時期並ぶ新米が好きだ。昨日ご縁があって新米を入手できた。炊きたてのご飯のきらびやかさは、黄金の稲穂のきらめきとは違う輝きを放っていた。一粒一粒につやがあり、炊きたての粒は、まさに食べる真珠と言っても過言ではないだろう。

炊きたてのご飯をありとあらゆる方法で食べた。辛味噌や、こんぶ、キムチなど魅力的な具は色々あったが、そのなかでも格別だったのは祖母が作った梅干しだった。祖父は梅をとって、祖母が梅干しをつくる。これも毎年の出来事だ。多少の量の差はあれど、できたての梅干しはほどよい酸っぱさがある。こうして書いていると唾液が口の中でじんわり滲む。

そんな手作り梅干しと新米ご飯が合わないわけがない。最高だった。一口入れれば、米の独特の甘さや、米の香りが鼻を通る。口の中の炊きたての熱さが、心地良い。

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毎年最高を更新するこの美味しさは、ずっと続いてほしいと思う。結局のところ、その日は、新米一合分を食べてしまった。当然、身体も大きくなったと思う。その日は体重計に乗らなかった。

幸い、私が住む地域は米以外にも農作物が比較的とれる地域だ。毎日旬のなにかがあって、私は毎日美味しいものが食べられる。幸せだと思う。物価は上がっているけれど、食べ物には異常なこだわりがある私だ。一人暮らしをしていたときは偏食で栄養ドリンクや栄養補助食品を一人で貪る毎日だったが、今は旬の食材を使って作った栄養満点の出来立ての料理を家族と食べられる。なんて幸せな悩みなんだろう。

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そんな美味しいものが食べられるこの街の、少しずつ移り変わる瞬間も好きだ。

昨日は咲いていなかった花が咲いていた。夜には冬の大三角形が見られるようになっていた。この前まで暑さに嘆いていたというのに、季節は早い。年々早くなっている気がする。そのうち、この地域には雪が降る。

これから毎日雪かきをしなければならない季節がやってくると思うと気が引けるけれど、雪の中で埋まっているキャベツの美味しさを私は知っている。そのキャベツをお鍋に入れて地元のお肉を入れると更に肉汁があふれる最高の食べ物ができることも知っている。まだまだ美味しい季節は続いていく。秋だけが食欲の季節ではないから。