それは2023年、元ビートルズのジョン・レノンの命日で、真珠湾攻撃の日で、わたしが4年前、ホノルルマラソンに参加した12月8日に起こった。

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その日は、友人が経営する飲食店で毎月あったオールナイト飲み会が開かれていた。わたしはそのお店から徒歩2分くらいのところに住んでいたため、毎月参加していた。

12月8日も、20時ごろお店に行った。

そこで、日本に住んでいるブラジル人(またはポルトガル人だったか忘れてしまった)と、そのブラジル人のもとへ会いに旅行に来たアメリカ人と知り合った。

わたしとアメリカ人が向かい合い、ブラジル人が間にいて話をすることになった。「好きな映画は?」と聴かれ、わたしは『マディソン郡の橋』と応えた。ちょっと自分でも驚いた。観たのは10年以上前なのに、とっさに出てきたアメリカ映画だったからだ。4日間のバリバリの恋愛物語。

「おぉ、『The Bridges of Madison County』ね~」みたいな感じでブラジル人はアメリカ人の様子をうかがいながら、アメリカ人は電子たばこを吸い微笑みながらわたしを観ていた。

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映画やドラマの話の後、アメリカの主要都市をわたしがベラベラと空中に手で地図を描きながら言って、アメリカ横断と縦断してみたい!と初対面の人に言うことなのか?首をひねってしまうようなことを言った。

アメリカ人はその間ずっとたばこを吸いながら微笑んで話を聴いていた。あとから思えばアメリカ人が言葉を発するのをきちんと聴いたのは「The Bridges of Madison County」だけだったと思う。

無口だった。無口な代わりに、その動きは胸キュン、だった。帰り際、わたしが何か言葉を濁すとアメリカ人は「ん?」という感じで、間近に顔を寄せてきたのだ。やばい、王子様が白馬に乗ってやってきた……。

何が起こったかよくわからなく、なぜかFacebookだけ交換した。そのFacebook情報で彼らが10年ほど前、わたしの好きな作家の出た日本の大学の院に通っていたことが分かった!!ええ~、もっと早く知っていれば小説の話もできたかもしれないのに!もっと話したかった!

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アメリカ人はFacebookの更新は全くなかったが、たまにオンライン中となることがあった。しかし連絡を取ろうとするも、既読つかない。無口なだけでなく筆不精でもあるのか。

そんななか春頃、インスタのアカウントを発見した。なんと美しいフィルムカメラの写真たち。『マディソン郡の橋』のロバートじゃないか!と感動し、慣れない英語でフォローした、よろしくといった内容のメッセージを送ったが、既読つかず。それどころか新たな投稿をしていた。無視かぁ、さよなら。と思いフォロー解除した。

GW、小学2年生の“愛”佳ちゃんとおしゃべりしていた。わたしがアイカってどんな字書くの?と聞き、愛佳ちゃんがママに文字を聞きに行った際に、何気なくインスタを開いた。

そしたら、例のアメリカ人からフォローリクエストが来ていた!わたしは何も考えず即フォロー返した。忘れたころに来るなんて、いままで感じたことのない種類のドキッと感あった。サプライズみたいー!しかも、いつの間にか私のストーリーに既読ついているし!愛。

そうだ、いまの時代、女も気になる人には自分からアプローチ掛けていくべきだなんて言うけれど、やっぱり男の人からさらりとフォロー来るのはキュンキュンしてしまう。愛。

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9月のある日、長年使っていた真っピンクの口紅が折れて使えなくなった。
こうしてわたしが使える口紅はオレンジ系のみとなった。

アメリカ人とのことはGW以来めぼしい進展は無し。ストーリーも既読つかない。

わたしは最近、ちょっとした賭けに出てみた。

失敗したら、この一連の出来事はこのまま保存する。
成功したら、おばあちゃんになっても後世にうっとうしがられない程度に「あの頃ね、こんなキュンキュンな出来事があったのよ」と語りたい。

10月。オレンジ色が似合う秋の日にわたしはまたひとつ、年を重ねる。