社会人になると、色々と億劫になってしまう。好きなこと、やりたいこと、行きたい場所はあっても、時間がないとか、疲れているとか、理由という名の言い訳を並べてしまう。
そして、SNSを覗いてみては、みんな楽しそうだなと劣等感や自己嫌悪に襲われる。日常のたったワンシーンに過ぎないとわかっているはずなのに、その人たちの全てが順風満帆で充実した日々に思えてしまうことがある。

私も社会人になりたての頃は、毎週末、行きたいカフェに行ったり、友人と会ったり、ひとりでドライブに行ったり、プライベートを充実させることに勤しんでいた。
でもいつからか、なんだかやる気が出なくって、疲れてしまって、面倒臭くなって。行きたいなと思っても、まあいいやと、腰が重くなる一方だった。

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私は日本を代表する有名なアニメファンのひとり。新作の映画が公開されれば観に行くし、グッズだって少なからず持っている。ピアノを習っていた時は、年に一度の発表会の選曲で、そのアニメの曲を選んで弾いたこともある。

毎年のように、日本全国のどこかで期間限定の展示会が開催される。SNSで情報を見かける度に行きたいなと思いつつ、やっぱり遠いな、開催期間が短いな、最寄りの会場はもう終わってしまったし、と誰が聞くわけでもない言い訳を並べて、気づいたら終わってしまった、チケットが完売してしまった、ということが多かった。
特にコロナ禍を挟んで、もともとあまり都会や人混みが得意ではない私に、絶好の言い訳ができてしまった。

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コロナがやっと落ち着いてきたここ1、2年。すっかり倍くらいには重くなってしまった腰をあげる時が来た。
私のパートナーは別にそのアニメが特別好きというわけではないから、展示会があってもあまり私から積極的に誘うことは無かった。

それでも、私がたまに次はここで展示会やるんだって、いいな行きたいなと口に出すと、彼もまた、コロナ禍で減ってしまった外へ出る機会を埋めるかのように、たとえ開催地が遠くても、行くか〜とむしろ私よりも積極的に背中を押してくれるようになった。

完全に甘え以外の何物でもないけど、自分ひとりで行こうかどうか悩んでいるよりも、口に出してしまうと、誰かが背中を押してくれたりして。私にとっては、それがパートナーだった。

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少し遠くても、行くまでの過程が旅行だと思えば、より一層楽しい。チケットの争奪戦も、ちゃんと早めに情報を仕入れて、候補日をいくつか出しておけば、焦らない。

行かない言い訳を探さなくて済むように、自分で予防線をはるようになった。

だって、実際に行ったら、後悔することなんて無いんだもの。強いて言えば、人が多すぎてのんびりは見れないとか、写真を撮るために並ばないといけないとか、そんなところ。

行ったら楽しい。終わってみたら、行って良かった。

あらためて好きだなと感じたり、知らなかった一面を知ることもあるだろう。お気に入りの写真を撮ったり、グッズを購入したり。
これまで何回、このチャンスを逃してきたんだろう、ああ、もったいない。

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好きなこと、やりたいことも、勝手に自分の手元に出現するものでも、目の前に降りてくるものでもなくて、自分で見つけて、掴みに行かなきゃいけないな。重い腰をあげて。ちょっと無理してでも、いいなと思った場所に行ってみよう。行ってみなきゃ分からない。やってみなきゃ分からないんだな、としみじみ感じている今日この頃。

そうして自分から掴みに行った時間が終わった頃には、きっとごきげんの私が待っている。