文章を書くことが好きだ。出かけ先、電車のなかでも、感じたことや、見えた景色から浮かんだ言葉、ネットや本で見つけた素敵なフレーズなどもメモする。

そのメモから派生した軽い文章を、空き時間で書いたりもする。出先では手元にペンと紙がないので、スマホのメモアプリを立ち上げて書く。アプリの中は、いつ書いたかも覚えていない文章たちでいっぱいだ。たまに読み返してみると面白い。

◎          ◎

仕事をしていても同じだ。出勤して最初にすることは、その日のやるべきことを文字に起こすこと。いわゆる、「やることリスト」の作成だ。

作成したやることリストに優先順位をつけて、順位の高いものから作業をこなしていく。リストに上がっている作業を終えられたらリストから削除し、また次の作業に取り掛かる。

そうやって仕事を終えた日は、高確率で定時退勤できている気がする。

やることリストに限らずとも、業務中は文章化する習慣がある。教えてもらったことを忘れないように、成果物に対して指摘されたことを、次は指摘されないように、マニュアルを毎日のように更新する。

業務の足跡を残すことで、次に同じ作業をするときに、誰かに聞かずともできるようになるし、同じミスをする可能性を低くすることもできる。新しい人が入ってきたとき、作ったマニュアルを渡せば、基本的なことはやってくれるはずだ。

だから仕事をするうえでも、文章にして残しておくことが好きだ。

◎          ◎

生きていれば嫌なことは必ず起こるもので、そんなときも文章に起こす。なんでもノートを作って、嫌だったこと、モヤモヤした感情、大変だったこと、愚痴など、心に突き刺さって離れない毒を、書くことで吐き出すようにしている。

ポイントは、紙に、ペンで書くことだ。紙にペンで書くと、驚くほど出て来る出て来る。勝手に手がスラスラ動いて、気づいたらページが文字で埋まっているのだ。

頭の中でこんがらがった悩みやら、憎悪が文字になって、アスファルトに降り積もった雪を踏み込んだときのように、真っ白かったノートの一ページがぐちゃぐちゃと、黒く塗られていく。

でも不思議と、それを汚いとは思わない。人間らしい自分が愛おしいと思う。

自分の本音に気づくことができる。こんな大変だったんだね、嫌だったね、お疲れ様、頑張ったね、と自分をねぎらう。このノートだけは、自分の本音を覗くことが出来る。心に積もって固まった雪を溶かしてやれるのは、私だけなのだ。世界でたった一人の理解者になれる。

◎          ◎

このなんでもノートは、私が私の味方でいるために必要な、大事な相棒だ。このノートを開けば、素直な自分の心にアクセスできる。ため込んだことはこの相棒が受け止めてくれる。

今日も寝る前、相棒に書き出そう。

今日は気分が良いから、誰かに感謝したこと、嬉しかったことを書いてもいいかもしれない。毒抜きも大事だけれど、生活の中で生まれる、良かったこと、楽しかったこと、幸せに感じたことにも目を向けられる人でいたい。

だから今日は、感謝したことをたくさん書いてみよう。雪の中に咲いた、小さな花を見逃さないように。