「どうしたの?雪嫌い?」冬の朝に溶けて消えた年上の彼へのもどかしさ
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私は10歳年上の彼とお付き合いしている。
彼とは秋に出会って、冬の初めにパートナーになった。彼は見た目も中身もかっこよく、男らしさも明るさも優しさも全て兼ね揃えた男性で、本当に素敵な人だ。
自分には勿体無いくらい幸せな日々が始まったが、私はこんなに歳の差がある恋愛が初めてで、どうしたらつり合えるだろう、どうしたら女の子じゃなくて女性として見てもらえるだろうと、事あるごとに考えていた。
彼は歳の差を気にしていないようだったが、仮に私が彼の立場で同じ分だけ年下の相手と付き合うと考えるとパートナーは13歳、中学生になったばかりの男の子ということになる。恋愛どころか、犯罪にすらなりかねない。
だから、私は少しでもこの恋が長く続くように、大人っぽく見られたかった。
そんな中、彼と過ごす初めてのクリスマスがやってきた。2人で相談して、一緒にホテルでお泊まりして、美味しいものを食べてゆっくり過ごそうと決まった。私はとっても楽しみで、クリスマスに向けてたくさん準備した。手作りのクッキーを焼き、大人の男性から人気とされる香水を買い、大人っぽメイクも練習した。
準備した甲斐もあって、彼から「可愛い」と言ってもらえて2人で過ごす時間が始まった。ホテルでのんびり映画を観て、食事をして、お酒を飲み……と楽しい時間を過ごして、一緒に眠った。
翌朝は私が先に起きた。
窓の外がとても明るい、気持ちがいい朝だった。寒いのを覚悟で少し窓を開けると、外は一面真っ白だった。昨晩、雪が降ったようだ。私の住む地域は滅多に雪が降らない。降ったとしても積もることはなく、道の端に土と混じった塊が所々に見られるくらいだ。だから、こんな光景はすごく久々だし、彼と一緒に過ごした日に雪が降ったなんて感動した。
眠っている彼に飛び乗り、「ねぇ!外真っ白だよ!」と感動を伝えた。彼はハッとした様子で起き上がり、窓に近づいた。そしてサッシに積もった雪を丸めて外へ投げた。「そこまで多くはないね」と呟き、携帯で天気を調べ、今日は1日晴れということがわかると安心した様子を見せた。
滅多に降らない雪を一緒に感動できると思ったのに、彼の一連の様子はまるで地震があった後に出口を確保し、震源や地震の規模を調べているようなそんな緊迫感すらあった。
太陽を見上げて安心した様子の彼に私は、「どうしたの?雪嫌い?」と尋ねた。すると、少し笑って「ううん、嫌いじゃないよ。ただ、車でここにきてるからチェックアウトまでに溶けるか、それとも予定を変更するべきか考えてた」と言った。ペーパードライバーの私には雪道の運転の危機感なんてものはこれっぽっちもなかったのだ。そして、彼は笑いながら、「雪だよ!」ってはしゃいでいる様子は子供みたいで可愛かった、初めて10個離れてるんだなって思ったと言って、また笑った。
この出来事が私の大人っぽくなりたいという気持ちを溶かした。
彼は年齢ではなく、ちゃんと私を見てくれている。そして、子供っぽいところも可愛いと受け入れ、心から笑ってくれている。
私もちゃんと彼自身をみられる人になりたい。どこか独りで張っていた気持ちが消えた後に、次の目標ができた。
百人一首では、雨が恋しい人を想って流した涙とされるように、あの日降った雪は何か意味を持ったものだったのだろう。
いつか90歳のおばあちゃんと100歳のおじいちゃんになって一緒に雪をみたいなと思う。
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