挑戦してみなければ成功することはない。2025年、私は作家になる
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エッセイを書くことにした。
きっかけは、意外にもマッチングアプリだった。
しばらく恋をしていない私に、会社の同期がマッチングアプリをおすすめしてくれて、初めてマッチした人とご飯に行ったときのこと。お店に着くまでに目に入る景色、相手が語る内容やふとした瞬間の仕草、それに対する自分自身の感情の変化……。お店に行って人とご飯を食べ、帰宅するという一つの出来事に、「恋愛に発展するかもしれない」というスパイスが加わるだけで、景色は鮮やかに、感性はより強くなったように感じられた。
特に、普段は気にもしないような相手の言動から「この人のこういうところは付き合ったらちょっと気になりそうだな」とか、「この価値観は一致しているな」とか、自分や相手の大事にしていることが明らかになり、それをすり合わせようとしていく感覚が、客観的に見て面白い。アプリを通じて複数の人に会う中で、自分が感じたことを残しておくためにスプレッドシートを使って管理しているという先輩もいたが、私の場合は、そういった事務的な方法ではなく、もっと鮮度の良い状態で、この記憶を残しておきたいと思った。
まずは試しにと数年ぶりに私用のパソコンを開き、USBを刺すと、そこにはWordファイルが一つだけ残されていた。大学生の時に書きかけた、小説だった。小さい頃から本が好きで、学校の休み時間も教室で一人読書をし、家では本を読みすぎて怒られるほどだった。作家に憧れたことも、もちろんある。昔に思いを馳せながら、新しいWordファイルを作成した。思っていた以上に、すらすらと文章が出てくる。そして、書いていること自体が、面白い。あっという間に、エッセイの最初の章ができあがった。
調べてみると、エッセイの公募は、私の想像以上に多いらしい。賞金が出るものや、実際に雑誌に載るものなども、数多く募集されている。ペンネームや自己紹介の文章のイメージはもちろん、何かの賞を運良く受賞し作家になれた際にどんな風にインタビューに答えるのかまで、妄想上の作家「もぐもぐ」は一日で出来上がった。
2025年から、作家「もぐもぐ」は、本格的に活動を開始する。実はこのエッセイが、初めての応募だ。妄想通りに編集者の目に留まりデビュー作となるのか、はたまた現実の厳しさを知るのか。結果は分からない。
だが、挑戦してみないことには成功することはないし、これがいつか偶然何かしらに繋がることだって、あるかもしれない。何をもって「作家」を名乗っていいのか分からないが、万一そんな存在になれたとしても、「作家」は副業として続けるつもりでいる。自分自身が体験したことや触れた物事が、書く原動力になると思うからだ。だから、仕事もこれまで通りやりながら、少しずつでも文章を紡いでいきたい。
作家というと原稿用紙に文章を書いて、郵便で送るイメージが強かったが、今の時代はネット上で応募ができるらしい。郵送だったらきっと、封筒をポストに入れる際に、祈りを込めて投函するのだろう。それと同じ重みを感じながら、私はフォームの送信ボタンを、押す。
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