降り積もる雪をみれば、雪だるまを作りたくなる衝動に駆られるのは大人も子供も同じだろう。これは24歳の私が彼氏と雪山に行き、雪だるま対決に心を燃やした時の話である。

さかのぼること2年、関東ではなかなか見ることのできない雪山を堪能すべく、私と彼は三重県の御在所ロープウェイに乗って雪山を訪れた。標高1200メートルからの壮大な景色に加えて青白く眩しいほどに輝く雪景色は圧巻で、寒い冬にもかかわらず私たちの気持ちは開放感とすがすがしさでいっぱいになっていた。

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ひとしきり2人であちこち探検したり写真をとりまくったりして雪山を満喫したところで、たくさんの柔らかな雪をみて童心に返ったのであろう、彼からどちらが上手に雪だるまを作れるか、雪だるま対決をしようじゃないかとの提案がなされた。

“対決”ときたら負けられない。私はもちろん彼からの宣戦布告を受け入れ、本気で「上等な雪だるま」を作って彼を驚かせるべく、輝く雪の中からより綺麗な雪が降り積もるエリアを選択してせっせと雪をかき集めだした。

この時の私の頭に思い浮かぶのは、私が作った完璧にかわいい雪だるまを見て「これはうますぎる!!」と大絶賛する彼の嬉しそうな顔。そんな顔を想像しながら雪だるまを作る私の手には力がみなぎり、やる気の炎はごうごうと燃え盛っていた。

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一方で肝心な雪だるまはというと、私があまりに力を込めてぎゅっぎゅと握るせいか、結晶が解けて氷が透け、がちがちに固まった氷塊となっていた。それでもなお固めて作る方がうまくできると確信していた私はきれいな丸に修正すべく、さらなる力を雪玉に加えてゆき、雪玉はそのいびつさに拍車をかけてゆく……。

その後の試行錯誤もむなしく、でこぼこな丸が積み重なった雪だるまが完成した。最初のイメージからあまりにかけ離れているだるまをみてがっかりするも、どうせ彼もそんなもんだろう……と彼の失敗を期待しながらいざお互いの雪だるまご対面。

すると……なんということでしょう!彼の雪だるまはしっかり雪のふんわり感を残しつつ、きれいな真ん丸が2つ積み重なった、なんともやわらかで愛おしい子が完成しているではありませんか!!あまりのふんわり具合に完敗。

私の口からは当初自分が言われるはずだったセリフ、「これはうますぎる……」がついつい漏れ出てしまったのである。

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そこで自慢げな彼からの一言。「道民なめんなヨ」。ハッとした。そう、彼は北海道出身で雪だるま作りなどお手の物、幼少期からの経験値が私とはまるで違ったのである!

彼が北海道出身だということをその瞬間だけ忘れていた私は驚きを隠せなかったが、北海道で生まれ育ち、愛おしいほどに上手な雪だるまを完成させた彼へ心からの賛辞を呈したのであった。

誰もが経験したことのありそうな雪だるま作りの思い出だが、私にとっては2つの雪だるまを見比べた瞬間は驚きと感動の詰まった忘れがたい瞬間であった。

みなさんも今後雪だるま対決をすることがあるかは不明だが、そのときは雪のふんわり感を忘れずに、熱い思いをもって雪だるま作りを楽しんでほしい。