私は良く言えば節約家、悪く言えばケチな人間だ。

◎          ◎

大学生になり買い物を自分でするようになったが1円でも安く済ませるために毎日のチラシのチェックは欠かさない。どの店でどんな商品が安いかも詳しくなってきた。

家の中にいても電気代がもったいないからできるだけ電気はつけたくないし、エアコンは一度の違いが後の電気代に数字として出るので夏は高めに、冬は低めに設定、そろそろ寝ようと思った瞬間に停止ボタンを押す。こうした努力でどのくらいお金が貯まるのかを確認はしないが、月末の残金が前の月より多ければ嬉しくなる。推し活や旅行のために貯金しておこうと思うと胸が躍る。なにより、増えていく残金を見て、「私、今節約してる!」と感じる瞬間が楽しい。

◎          ◎

これを自分が趣味として楽しむことができれば良いのだが、他人がそれを気にしていないとイライラしてしまう。

現在歳の離れた姉と同居中。通っている大学の近くに住む姉のマンションに間借りさせてもらっている私は、郷に入っては郷に従えの通り、基本的には姉のやり方に準じている。

ただ、細かい生活スタイルの違いはどうしても気になってしまう。仕事で行ける時間が限られているため仕方がないとはいえ、あまり注目の品を見つけられないスーパーでまとめ買い。太陽の光が眩しい朝でも電気をつけていて、エアコンは起床数時間前から起動するように予約、居住地より北国の地元の家以上に夏は低く、冬は高い温度設定……。

食費は別で各々好きなものを食べているし、光熱費は親からの一定額の仕送りをそのまま渡している。間借り人の私に文句を言う資格はない。

私は仕送りと奨学金で生活しておりバイトはこれから始める予定。なくなるばかりのお金を減らさないように必死だ。対して姉には収入があり、別に困窮もしていない。

「これが大人の、余裕……?」

そんなことも考えたが、そうじゃない気がする。しかし何か理由を見つけなければ不満に思うところはどんどん見つかってキリがない。

日々電話で文句を聞いてもらっていた母に「自分のお金じゃないんだから気にするな」と諭されたので諦めてそう思うことにした。

◎          ◎

自分は自分の思うように節約すると決め、人の行動は気にしない。

「あー今お金が逃げていってる」

なんて思うことはやっぱりたまにあるのだけれど。 

人付き合いに実際に影響はしていないが、全くないわけでもない。誰かと外食した時に数百円でも安いものをと、特段食べたいわけでもないメニューを注文することがある。苦手なものは避けるしなんだかんだで美味しくいただくのだが、後からどうしてそれを頼んだのか、家でも食べれるものだったのではないかと思うこともある。友達と一緒に頼めば良いものを、ドリンクバーをケチったり、トッピングを減らしたりしたこともある。

お金が足りないわけではない。むしろ勘定をする月末には十分すぎる程に余ったと毎回感じている。今すぐ買いたいものも行きたい場所もないため、ただただ貯金をしている。とにかくこの喜びを感じるためだけにストレスを溜め、空気の読めない行動をしている自分が、客観的に見ると恐ろしい。他の人に比べてお金に取り憑かれている方だと、自分でも感じる。

◎          ◎

そこでお金と距離をとるために、せめて友達との遊びの時だけは気にせずに使うことにした。他で使う場面が少なすぎるのだからそのくらいは使っても良いだろうと考え直した。交際費、大切。

家では相変わらず目に見えないケチを続けている。だがそれも自分に関わる時だけだ。二人でいる時は姉に合わせる。エアコンがたまに暑すぎたり涼しすぎたりするが、基本的に快適なのは正直否めないので文句は言うまい。むしろ電気代と引き換えに感じる快適さの恩恵を勝手にもらっているのだから感謝すべきかもしれない。

節約する場面は人によって違うのだから、自分の価値観で他人を推し量ってはいけない。

そんな教訓を得た私は、月末に聞く小銭の音を、千円札十枚が一万円札になる瞬間を、とにかく楽しみに、一人で程よく今日も節約している。