2024年に全てを置いていくべく、久しぶりに恋“愛”感情を抱いた彼との全てを改めて思い出して、文字に起こす。別エッセイでは反省と後悔をつづったが、ここでは私が彼に正面から向き合って感じていたことを書き留めたい。

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私は、恋“愛”体質ではない。23年の人生で、本気で好きになった相手は告白できずに終わってしまった大学時代のバイト先の社員さん1人だけ。自分の中にあるボーダーラインが高すぎることは理解していた。

彼とは、推しに会いに行った後の合コンで出会った。第一印象は“目がバキバキ“。最悪だった。
合コンの翌日、「ドライブに行こう」と誘いが来た。昨夜私が「ドライブが好き」と言ったことを覚えていたのだろうとは思ったが、初手からドライブに誘うなんて変わり者だなと思った。
結局、後日飲みに行くことになった。会うまでの間、多忙な彼なりに頑張ってくれたであろうまめな連絡や突然かかってくる電話を通して、仲を深めた。彼の発する言葉は、いつでもまっすぐだった。彼は、この時すでに私のボーダーラインを超えていた。

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そして合コンから2週間が経った金曜日、私は彼に会った。一緒にいる心地よさが他の男の人とは明らかに違った。

でも、確かな違和感があった。父と仲が良いといった私に対して「本当のパパ?パパ活してるの?」と聞き、「許容度高そう。なんでも許してくれそうだよね」と言ってきた。
そして、帰りは駅まで案内してくれたけれど、なぜかお店の最寄りではなく、彼の家の最寄り駅に案内され、「上がっていってとは言わないから、うちの外観見てく?」と言われた。ダサすぎる誘い文句だった。遊ばれていると感じた私は、次のデートの約束をうやむやにして、逃げるようにしてその場を去った。

でも、ワイングラスを飲みまわして照れていたこと、「惚れ直しちゃうな」とくさいセリフで好意を見せてくれたこと、まっすぐに見えた行動もあって何を信じたらよいのか分からなかった。ボーダーラインを越えてしまっていた分、頭が混乱して自分の感情も彼の考えていることも分からなかった。

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私は、彼とは違って誠実な彼の友人がデートに誘ってくれていたこともあって、1か月間彼との連絡を絶っていた。その間、彼を忘れることに必死になったけれど忘れられなかった。
だから彼の友人と切れた日、勢いだけで連絡してしまった。この時初めて彼に対しての恋“愛”感情に気がついた。恋“愛”弱者の私は、自分の気持ちに気がつくまで時間がかかってしまったことを後悔した。

次の日、電話をした。私は、自分から終わらせるような連絡をしていたのに、「なんで連絡をくれなかったの?」と聞いてしまった。彼は優しく、「2回目は嫌なのかと思った。また連絡くれてうれしいよ」と言ってくれた。そして、私にも同じ質問をしてくれた時、「遊ばれているのかと思った。傷つくことは言わないでほしかった」と伝えたら、「俺はそういうことはしないし、嫌なことはしないようにする。ごめんね」と言ってくれた。やっぱりまっすぐな人だったと思った。彼であれば信じても良いのかもしれない、そう思えた。私は時間が経っても変わらなかった彼との会話の心地よさにときめきながら、2回目のデートの約束をして電話を切った。

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それから数日は、出会った当初よりも丁寧な連絡をしてくれた。毎日「おはよう」を言ってくれたし、次こそドライブに行こうと約束もした。でも、ある日を境に返信が来なくなった。約束の数日前に追いLINEをしたところ、きちんと会うことに対して前向きな返事が来たけれど、何かが変だという感覚はあった。

私は、彼に対して本気になりすぎていた。優しさに触れすぎてしまったし、気の合う感覚も、女の子として大事にしてくれる感覚も嬉しかったから。
失礼な発言も遊びの可能性も、全部許せてしまうくらいには確かな恋“愛”感情だった。周りの友達は口を揃えて必死に「やめろ」と言ってくれたし、自分の頭でもわかっていたけれどやめられなかった。恋は盲目を痛感した。だから、どうしても会いたかった。

でも約束の日の前日に、彼と繋いでくれた友人から「大学時代2股してたらしいよ。噂では5股だったとか」と連絡が来た。“なぜ、今?”私は動揺した。自分がまっすぐだったと思っていた彼には裏の顔があるのか、遊びだったから今も未読無視なのか、もっと早く知っていたら彼への想いは違っていたのだろうかと様々なことを考えた。結局、当日が来ても彼からの連絡は来ないままだったし、私から連絡する勇気も出なかった。彼とはそこで「不完全燃焼」のまま、終わってしまった。

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人生で初めてはっきりとした失恋を経験した。でも、失うというよりも恋を奪われたような気分だった。彼は、私に直接アタックするチャンスすらくれなかったのだ。

今も未読のままのLINE。でも、インスタのストーリーの既読は早い。別エッセイで書いた通り連絡が来なくなった理由になんとなく心当たりはあるけれど、はっきりとした理由はわからない。本当は彼もまだ私のことを気にしていて、いつかまた連絡が来るのではないかと思ったりもする。失恋とは、またその人とうまくやれる日が来るんじゃないかという希望を抱いてしまうものなのだろうか。はたまた「運命厨」とあだ名がつく私だからそう思うのだろうか。私にとっては初めてだから、普通が分からない。

朝苦しさで目覚めて、日中は必死に動いて忘れようとして、夜は友人と彼について答えのない話し合いをして、虚しくて悲しくて涙を流す。いつか、この毎日に終わりは来るのだろうか。今はまだわからないけれど、この苦しさを乗り越えられる日が来たら、私はようやく、恋“愛”感情と向き合える人になるのだろう。