このお題を見たとき、人生で食べてきたご飯のことって意外と記憶にないのかもしれないと思った。
それでも、今の自分から振り返ったときに色んな思い出はやっぱりあるので、一つずつ思い出しながら「あ、あのごはんが一番記憶に残ってるかも」というものを書いてみる。

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今から5年以上前になると書くことにゾッとするが、私がまだ大学4年の夏。
所属していたサークルの夏合宿があり、3泊4日を目いっぱい楽しむ恒例の行事だった。
毎年行く先は異なっていたが、その年は私の代が1年の頃にも訪れた場所だった。
泊まるペンションも同じだったので、同期たちと「懐かしいね」「こうだったね」と話しながら、自分たちが4年となっている事実を噛み締めていた気がする。

3泊4日の中はTHE夏合宿と言えるようなイベントばかりだったので、川遊びやBBQ、花火もしていた。
今なら体力が有り余ってるなぁ……と若さを微笑ましく思う。

全部美味しいものを食べていたと思うが、自分が心に残っているごはんは、自分たちで釣った鮎を焼いた「焼き魚」だ。

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川釣りのできる場所でそれぞれが竿を持って鮎を釣るのだが、リール等もない普通の釣り竿なので、タイミングを合わせて釣り上げるしかない。
最初、皆なかなか釣れずに困っていたが、川にいる魚群を観察したチームが釣り始め、それぞれ場所を変えたりしながら釣果を上げていた。
私も確か1・2匹ほど釣り上げたと思うが、正確には覚えていない。
ただ、1人1匹分は確保できるよう、サークル全体で協力したのは覚えている。

釣ったばかりの鮎はその場で締め、内臓を出して、串に刺し、塩を存分に振りかける。
この作業をみんなでしていたが、いつの間にか分業制となり、素早い動きで作業が完了した。

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さて、炭火で焼き始めるぞ!というとき、急なゲリラ豪雨に見舞われた。
大所帯だったが、屋根のある炭火小屋に皆固まって鮎が焼けるのを待つ時間。
「いつ焼けるかな」「もうちょっとかな」「まだかも」
色んな話し声と雨粒が重なり合っていた。

雨も上がりつつある中で、私たちの鮎が焼けた。
皆1尾ずつ手に持ち、焼きたてほやほやの鮎をかじった瞬間「なんでも出来立てが美味しいというが、釣れたてを焼くのが最高だ!」と感じたのを覚えている。
皮はパリパリ、身はふわふわ、ジューシーさもあって皆が一心不乱に食べていた。
私は今でもこの味と光景が忘れられない。
雨上がりのキラキラした夏の空気、自分たちで釣った鮎の美味しさ、みんなで一緒にこの空間を共有していること。あれは一つの幸せだったなと思う。

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今、私は27歳で、あの瞬間を共有した友人たちとはまだ仲良くしている。
何人か結婚したり、子供ができたり、同棲したり、転職したり。皆の人生を近くで見ているからこそ、あの大学時代を共に過ごしたことは大切にしなきゃなと思う。
「あの鮎は美味しかったよね」と合言葉のように思い出を話せる相手を、ちゃんと大事にしなきゃなと思う。

私は今この瞬間に、あの頃みたいな大切な思い出を作れているのかな。
歳を重ねる毎に「諦めること」が得意になってきてる気がするので、たまには昔の自分を思い出して、ちゃんと今と照らし合わせなくては。
あの頃の自分が今の自分を見たら、「もっと頑張れよ〜」と言いそうなので、もう少し頑張ろうと思う。